視点

柔らかな繋がりが生みだす“新たな挑戦”

2011/10/27 16:41

週刊BCN 2011年10月24日vol.1404掲載

 岐阜のソフトピアジャパンは今年で15周年を迎え、8月にはいろいろなイベントを催した。まずは過去を振り返ったCom.Evo.(コムエヴォ)。もう郷愁でしかない狂騒のバブル期から安心・安全を大切にする現在までの時代の流れを、各自が家のどこかに秘蔵(?)しているPCを持ち寄って展示し、自分たちが関与した情報化の歴史を考えることにした。NEC TK-80からApple iPadまで70台を超えるマシンを時代ごとにコンセプトを設定して並べてみると、岐阜の情報化に賭けた人々の熱い思いが伝わり、予想を越えて共感を呼ぶイベントになった。

 この歴史の延長に、今の岐阜で起こっているイベントを示したのがIAMAS LIVEである。スマートフォンのアプリ開発でそれなりの社会的評価を得ているソフトピアのパワーをみせようと、とても意欲的な作品を展示した。例えば、スマートフォンの振動機能を活かして、端末本体を針として動かす時計のように、実に大胆な発想で可能性を広げた作品や、複数のスマートフォンの間の不可思議な関係性をみせて、次世代社会の新たな関係性を暗示する作品など、IAMASのまさにLIVEを表現した。

 もう一つがMobilecore Hackathon(モバイルコア・ハッカソン)で、スマートフォン・アプリの開発拠点を目指す岐阜県として、開発者同士が泊り込みで一気にアプリ開発を実践するコアなイベントを催した。ここには仙台からも十数名が参加した。人的交流を中心とした被災地支援という意味もあって、仙台の実情を学びながら、一緒に開発に励むという、気持ちのこもったいいイベントだった。今までのつながりのネットワークが、こういうコアなメンバーの間でも継続されることに、胸が熱くなったものである。

 地方にあっても、情報化に携わる人々の繋がりの連鎖から、いろいろなパワーが湧き出てくる。知らない間にそのパワーが伝播し、いざという時にはしっかりと繋がり、普段は空気のように環境化している──そんなネットワークがソフトピアの財産なのだ。ユニークな試みをすれば、人はどこからでも集まってくるし、ユニークな小さな都市間での柔らかなネットワークを生みだし、そこでは新たな挑戦が自然と起こる環境が形成され、みんなが活き活きと暮らす、という好循環が創出できる。10月6日、こんなことを書いていたら、このような世界のルーツを創造したスティーブ・ジョブズの訃報が入ってきた。若すぎる。
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