視点

太陽光発電の固定価格買取制度と採算性

2012/06/07 16:41

週刊BCN 2012年06月04日vol.1434掲載

 再生可能エネルギー特別措置法が7月1日に施行されるが、「固定価格買取制度」の詳細を検討する経済産業省の調達価格等算定委員会は、4月25日に買取価格と期間の原案を決定した。果たして今後の太陽光発電の市場や電力料金にどのように影響していくのだろうか。

 太陽光発電の固定価格買取制度は、10kW以上のシステムに対して買取価格42円/kWh、買取期間は20年(最低3年間は継続)と設定された(ただし、買取価格と期間は定期的に見直される)。例えば、10kWの太陽光発電システムを設置した場合、年間予想発電量は約1万kWhとなるので、単純計算で年間42万円の買取りが見込め、20年間での買取総額は約840万円となる。ここ数年で、太陽光モジュールの価格下落や工期を短縮できる設置架台の開発などにより、初期費用が1kWあたり40万~50万円程度で設置できる事例も出てきた。したがって、10kWの設置の場合400万~500万円の初期費用となり、340万~440万円が単純に利益と計算できる。地代家賃やメンテナンスコストを控除しても十分に利益を確保することができると予想されるので、投資する企業やファンドが増えてきた。自治体もエネルギーの地産地消、地元産業の活性化に向けて誘致場所を提供するなど、後押しする動きも出てきている。

 ただし、固定価格買取制度の実施に伴い、買取金額は電力契約者すべての電気料金に付加されることになる。調達価格等算定委員会は、一般的な家庭における付加金は、月額約100円程度になると試算した。これとは別に、5月に入って、東京電力が経済産業省に申請した今年7月からの一般的な家庭における電気料金の値上げ額が月額で480円と発表された。両方とも電気料金が上昇することは変わらないが、その中身はまったく違う。

 今回の東京電力の値上げは、高騰した石油やLNG調達コストの増加からきているので、電力供給における「海外燃料調達費」として日本の資産が海外に流出することにほかならない。これに対して固定価格買取制度による値上げは、電力供給における「国内地産地消投資」といえ、国内資産の留保と地域産業活性化・雇用拡大に寄与すると考えられる。

 今夏には、日本の長期エネルギー政策が発表される予定だが、本気で再生可能エネルギーを増やすためには、今回提示された買取価格(42円/kWh)と3年間継続については維持する必要があると考える。
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