燃えよユーザー会 ~もっとITを有効活用したいユーザー企業へ~

<燃えよユーザー会 ~もっとITを有効活用したいユーザー企業へ~> 人事部門が社員教育に活用――三菱電機情報システム・ユーザ研究会

2013/11/19 20:28

 ユーザー会でのユーザー企業とベンダーの距離、つまりベンダーがどこまでユーザー会に関与するのかは、ベンダーが最も気にする部分だ。宣伝色が強いと、ユーザー企業は売り込みを警戒して参加してくれない可能性がある。ベンダーはユーザー会によってユーザー企業を囲い込みたいが、参加してもらえなければ元も子もない。そのため、とくに会費で運営するユーザー会の場合は、会員の自主性に任せて、ベンダーは事務局に徹するケースが多い。ところが、「三菱電機情報システム・ユーザ研究会」では、最近、会員から「宣伝を含めて、三菱電機らしさをもっと出すべきではないか」という声が出ているという。

MELCOM研究会でスタート

 三菱電機のユーザー会は、1967年、三菱電機の汎用機「MELCOM-3100 Data processing system」のユーザー企業を中心に「MELCOM研究会」という名称でスタートした。情報共有だけでなく、汎用性の高いコードをサブルーチンとして切り出して提供しあうといったことも行われていた。そして、1996年、ダウンサイジングの流れを受けて「三菱電機コンピュータユーザ会」に改称。また、ハードウェアよりも情報システムの利活用にユーザー企業の関心が変わってきたことから、2003年には「三菱電機情報システム・ユーザ研究会(MEL研)」へと名を変え、現在に至っている。本部のある東京支部のほか、地方組織として中部支部、西日本支部、九州支部がある。

 会員構成は、三菱電機のほか、三菱電機インフォメーションシステムズ(MDIS)、三菱電機インフォメーションテクノロジー(MDIT)、三菱電機情報ネットワーク(MDID)、三菱電機ビジネスシステムズ(MB)という三菱電機グループのIT関連会社4社のユーザー企業とパートナー企業で、会員は約260社。汎用機から続く三菱電機のIT事業を分社化したMDISのユーザー企業が最も多い。ちなみに、MDIDとMBには個別のユーザー会もあるが、いずれは完全に統合する考えだ。

 会費制のMEL研だが、すべての運営を会員に任せるのではなく、ある程度、三菱電機がリードしている。ただ、宣伝色が強いとユーザー企業が参加しにくいのではという配慮から、あくまでもユーザー企業同士が情報交換をする場としての存在を目指してきた。

 ところが、他社のユーザー会との差異化が難しいという問題が出てくる。とくにオープン化が進んで以来、テーマの設定は難しくなる一方だ。ビッグデータがはやれば、どこのユーザー会もビッグデータ分科会などをやるようになる。そんな背景から、「最近では、会員から『メーカーからのメッセージ性を強くしてほしい。もっと商売に使ったらどうか』という声が上がっている」と、三菱電機でMEL研を担当する井河利康事務局長は語る。多くの企業が投資モードにシフトしているという見方もできるが、三菱電機は、現在会員の声を参考に方針を見直しているところだ。

ワインの試飲会やボーリング大会も

 とはいえ、ユーザー会の魅力は、何といっても課題や情報の共有を目的とした会員同士の横のつながりができるところにある。MEL研でも、月に1~2回開催している専門分科会やその成果を発表する総会、そしてセミナーなどを積極的に開催している。IT以外の活動にも力を入れ、ワインの試飲会などのカルチャーセミナー、さらにはゴルフコンペやボーリング大会なども開催している。「海外研修会は、『見識を広げるのにいい』と有効活用していただいている。プロジェクト成功のお祝いで参加するケースもある」(井河事務局長)。

 こうした多彩な取り組みが評価され、最近では人事部門の研修課から入会の申込みがあるという。社員教育の一環として利用しているのだ。有料研修会に参加させたり、自社で海外研修をセッティングしたりするよりも、コストを抑えられるというわけだ。また、外出する機会の少ないIT部門の社員向けに、外の空気を吸う機会を与えようという考えで参加する企業もある。もともとは汎用機を有効活用するための情報交換の場だったMEL研。ITの変化とともに、今後も進化していくだろう。

三菱電機
インフォメーションシステム事業推進本部
三菱電機情報システム・ユーザ研究会 事務局
井河利康事務局長


【概要(2013年11月現在)】

入会資格: 三菱電機グループが提供している情報システム、コンピュータ製品、情報サービスを使用または使用予定の企業、官公庁、事業所等の法人、団体、関係者
入会金: なし
会費: 24000円/年(2000円/月)
会長: 福井 信(三菱製紙)
主な活動: 特定のテーマを研究する分科会、ワークショップ形式の研修会、セミナーなどを中心に活動。また、ボーリング大会やゴルフコンペなどで親睦を図る
会報誌: 『こみゅにてぃ』(年2回発行)
会員企業数: 約260社
発足: 1967年
その他: FISA(情報システム・ユーザー会連盟)に加盟
イベント/セミナー: 定例総会(毎年4月開催)。新春講演会やカルチャーセミナーなども開催
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外部リンク

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