国内の情報サービス産業界で、「マネージド・サービス」が増殖中だ。古い用語集には、「インターネットVPNやIP-VPNなどを利用する際に必要な通信機器の設定・設置。保守管理サービス」とある。一般的には通信機器に関連する用語として定着していた。

　この言葉を流行らせた火つけ役は、ポータルサイトや通信サービスを提供してきた、かつてのISP（インターネット・サービス・プロバイダ）だ。多くのISPは現在、自社の業態をMSP（マネージド・サービス・プロバイダ）と称し始めている。通信料金やネット上のサービスで回収するビジネスから、クラウドの普及に伴って、「サーバー構築や運用に必要な煩雑な作業を代行する」（GMOクラウド）モデルへと転換したことを物語る。

　クラウド時代に突入した今、マネージド・サービスの意味は、「ハードウェア資産を購入・保有せず、導入から廃棄までベンダー側で面倒をみる。その料金は定額制で回収する」に変貌したようだ。その行き着くところは、米オラクルが提唱する「マネージド型のプライベート・クラウド」になりそうだ。クラウドで使うインフラは企業内に置くが、企業は資産として保有せず、すべてオラクルが維持・管理する。企業は、定額制の予算内で改築・増強などを柔軟に行える。ユーザー企業は、ハードウェアを低料金でベンダーに任せることができる世界がやってくることを意味している。

　この言葉を販売会社の視点でみるとどうか。ある大手ディストリビュータが、IT製品・サービスを二次店の販売会社に卸す際、ハードの導入前のキッティング作業から保守・運用をサービス提供するケースが増えたという。担当者によれば「かつては聖域だった」部分だ。販売会社にとっては、作業費を取れる領域であり、他社に任せれば売り上げが減ることになる。しかし、安価なサービスが増え、この作業自体の競争力が低下した。

　これまで売上高の多くを占めていたインフラに関連する領域は、MSPなど大手が価格競争を繰り広げ、粗利を生みにくくなった。販売会社は、フロントエンドのシステムに付加価値をつけたり、クラウドを販売するストックビジネスにシフトする傾向が顕著になってきた。クラウドが起こす業態変革の波は、恐ろしいほど速い。