経済産業省(経産省)のある幹部は、「民間企業でのパーソナルデータの利活用について、標準化や指針類の作成、審査・認証・助言機関の設置などの方向性を打ち出したことは、新IT戦略の目玉の一つ」と言い切る。ビッグデータ利活用の環境整備のポイントとなるパーソナルデータ利活用のルール明確化と規制緩和は、日本の産業活性化という観点でみたときに、それほど大きなインパクトをもつということだ。
オプトアウトに期待する経産省
政府は、世界最先端IT国家創造宣言で示したロードマップに沿って、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)に「パーソナルデータに関する検討会」を設置し、その下部に「技術検討ワーキンググループ(WG)」も置いた。検討会では、主に法的な議論を行い、WGではITの技術的観点から、とくに匿名化技術に焦点を当てて、プライバシー保護などに配慮したパーソナルデータ利活用のあり方を探る。
議論の基本的な方向性は、これまで総務省と経産省がそれぞれ独自に検討してきた内容がベースになっている。経産省は、民間事業者と消費者の関係性に着目し、主にパーソナルデータの収集で企業に求められる取り組みについて議論してきた。事業者側は、インターネットなどを通じて消費者の情報を収集するわけだが、その情報項目や利用目的について、消費者側に納得・受容してもらう必要がある。そのための制度設計を検討した。その過程で抽出した「データ管理・分析のプロセスで匿名化技術をどう位置づけるか」という議論が、検討会のWGに引き継がれたかたちだ。
経産省が最終的に狙うのは、パーソナルデータを利活用したオプトアウトを可能にすることだ。オプトアウトとは、ユーザーの許可を得ずに、広告・宣伝メールを送る行為で、現在は禁止されている。「これがクリアされるだけで、民間企業のビジネスのポテンシャルは飛躍的に高まる」として、広く国民的なコンセンサスが得られる制度の確立に向け、主導的な役割を果たす考えだ。(本多和幸)