岐阜県ソフトピアジャパンでは、先日、「教育分野のIT活用セミナー」を開催した。総務省情報流通行政局の係長によるICT教育の基本方針と現状についての基調講演に続いて、岐阜県での取り組み事例の発表があった。

　そのなかで「岐阜各務野高校におけるタブレット端末活用授業について」の発表に、今後のICT教育についてヒントが隠されているな、と感じた。

　この授業が成功した要因は、用意されたタブレットが情報科の生徒の人数（39名）に対して20台しかないことだった。二人に1台でしか授業ができないことで、この不幸が幸いをもたらした。授業では、否応なしにもう一人の生徒と話し合いながら、タブレットを操作する。なので、この授業では、教師から生徒への直接的な知識伝達ではなく、その間に生徒間のコミュニケーションプロセスが介在せざるを得ない。生徒間で相互に学びあい、一方がわからなければ他方が教え、二人ともわからなければ、タブレットのネットワークから外部に出て情報探索を行う。その探索プロセスでも二人の協働的なコミットが不可欠になり、両者がわかり合えるまで試行を繰り返すことになった。これはまさに相互の学びであり、だからこそ生徒は学習することにやる気が生まれた、と発言した。

　この状況をみた先生も、どうすればもっといい授業になるか、単に知識を伝授するのではなく、生徒たちの意欲を喚起するためのタブレット活用の仕方を模索するようになった。先生たちも、生徒自らのコミュニケーションから学ぶプロセスこそが大事だ、と理解したようだ。同時に、生徒たちも、タブレット活用がもっと楽しくなったらいい、そうすればやる気が出る、と確信したのだ。

　もはや教師が生徒に教えるだけの授業ではなく、生徒間のコミュニケーション過程を誘発して支援する学びこそが本来の姿であり、教師は黒子に徹すべき──という教師と生徒の関係性を根本から見直すことが不可欠だと認識する状況になっている。タブレットは、このような互学互習のツールに変貌してはじめて教育に変革をもたらすはずだ。だから、学びの関係性の再設計こそが根本で、ICTツールはそこに大きな影響をもたらす要因となる。多くの現場ではこのようなICT教育実践を通して、新しい気づきが広まっているようだ。