伝統のある米ゼネラル・エレクトリック（GE）は、日本でいえば「重電」「総合電機」の事業体に位置づけられる。日本の企業にたとえるなら、日立製作所と同じく「重厚長大」の事業を展開している。そのGEは、2012年末、シリコンバレーに「ソフトウェア開発センター」を設立し、この地域周辺のITベンチャーとの関係を強化し始めた。

　米国の企業は、クラウド時代を経てビッグデータを活用する「Internet of Things（IoT、モノのインターネット）」の時代に突入した。その変化にいち早く対応するために、GEは「Industrial Internet」という戦略を打ち出した。平たくいえば、「ものづくりだけにとどまらず、ITを駆使してビジネスに付加価値をつける」戦略だ。

　GEがすでに実施している卑近な例を挙げる。米国の鉄道には、GE製の列車や線路が使われている。米国の線路に数百万か所と列車の車輪にセンサを配置し、ハードウェアを販売すると同時に、事故を未然に防止する監視サービスを付加している。

　このGEの動きが、なぜ注目に値するのか。ビーエスピー（BSP）の顧問も務めた米InterBusiness Corporationの野口芳延社長兼CEOはこう忠告している。「日本の製造業のものづくり力は、世界的にみても『素晴らしい』と評判が高い。だが、このことはGood Newsであり、Bad Newsでもある」。形のあるものをつくり出す力は、日本の製造業は一頭地を抜いている。だが、ビジネスをITを使って変革する力については、米国の製造業だけでなく世界的に劣っている。数年経てば、形勢が逆転するという指摘だ。

　日本のシステムエンジニア（SE）は、7割がITベンダー側にいる。一方、米国はユーザー側に7割いる。日本の企業の内情は、運用部門が強く、開発部門、すなわち「儲けるための戦略的投資」を仕掛ける部門の発言権が弱い。

　こうした事情はあるにせよ、ITを使うことに遅れがみえる日本の企業が心配だ。GEは、社内SEだけでこの戦略を成し遂げようとはしていない。「ITをビジネスにする」企業、例えばAmazon、Googleなど先進ベンダーのノウハウを積極的に活用するスタンスだ。日本の企業は、世界の先進技術に学び、これを取り入れて経営戦略を練ることが喫緊の課題になっているといえよう。