伊藤勝さんは、1983年に渋谷に開店したパソコンショップ「ソフトクリエイト」の店員を務めるかたちで社会人生活をスタート。現在は、システムインテグレータ(SIer)に変貌してきたソフトクリエイトでデータセンター(DC)ソリューションの営業活動を統括している。力を入れているのは、若手の部下とタッグを組んで、チームとして客先に入り込み、「この先10年のつき合い」を築くやり方だ。伊藤さんは、第1営業部の「フォロー役」に徹している。「叱り役」をグループ長に任せて、若手営業担当者の活動をバックで手厚く支援している。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/津島隆雄)
[語る人]
ソフトクリエイト 伊藤 勝さん
●profile..........伊藤 勝(いとう まさる)
およそ24年前、ソフトクリエイトに入社。パソコンショップの店員やパソコン教室の講師を務めた後、営業活動に携わる。大型プロジェクトを相次いで受注するなどの実績が評価され、5年ほど前に営業本部第1営業部の主席部長に就任した。
●所属..........営業本部
第1営業部
主席部長
●担当する商材.......... IaaSやPaaSなど、自社のデータセンター(DC)サービス
●訪問するお客様.......... 直近では、不動産業者など、東京五輪に向けたビジネスにクラウドを活用したい企業
●掲げるミッション.......... 独自商材を中核とするサービス事業の拡大
●やり甲斐.......... 「受注」お客様とのコミュニケーションや部下とのやり取りの楽しさ
●部下を率いるコツ.......... わからないことを正直に言ってもらうことの意識づけ
●リードする部下.......... 20人
チームで客先に入り込んで密接なつき合いを構築
当社はもともとパソコンショップの運営を手がけていて、その後、システム構築やEC(電子商取引)ソリューションに舵を切るなど、ビジネスの内容を大きく変えてきた。現在は、クラウドの登場を受けて、インフラやアプリケーションをサービス型で提供するDC事業の拡大を目指している。ビジネス内容や注力商材が変わると、当然、営業のスタイルを見直す必要も出てくる。お客様にDCサービスを長く利用していただき、しっかりした収益基盤をつくるために、これまで以上にユーザー企業に深く入り込んで、先方の経営層の方々にITを積極的に活用していただくようにしなければならないと考えている。
私が率いるチームは20人の構成で、20~30代のメンバーが多い。彼らは若いので行動力はもっているが、お客様の幹部クラスにアプローチする力が若干弱い。そこで、打ち出したのは、若手メンバーが一人でお客様を訪問するのではなく、私や当社役員とチームを組んで、最初の提案の段階から一緒に攻めるという戦略だ。主席部長の肩書きをもつ私が同行すれば、お客様のほうも部長クラスの方が出てこられるので、クラウドのメリットを経営層に伝えるルートを短縮することができる。
若手メンバーと一緒に電車に乗って、お客様のもとに向かう。電車の中では、商談の流れについてブリーフィングを行うほか、部下の緊張感を和らげるために、しつこくならない程度にプライベートの話もする。私が一方的にしゃべるのではなく、Facebookなど、ソーシャルメディアの活用方法について部下の説明を積極的に聞いて、若手メンバーのフレッシュな発想を吸収し、自分の成長につなげようとしている。商談が終わったら、先方が話したポイントは何だったかについて念押しをして、次にどんな提案をすればいいかを部下に考えさせる。
元来が温厚なほうなので、部内では「フォロー役」を心がけている。部下たちを厳しく指導して、常にていねいな顧客対応を貫くことを促す「叱り役」は、二人いるグループ長に任せている。現在は、部下に同行したり、一緒に提案のパターンを考えたりすることに時間をかけているのでなかなか大変だが、お客様に入り込んで、部下もソリューション提案の仕方に慣れれば、いまの苦労が実を結ぶと考えている。
ちなみに、私は個人の予算ももっている。会社で一番高い数字で月間利益ベースでいえば300万~400万円程度だ。営業マンとしても部長としても、事業を拡大していくぞ!

会社から支給されたiPadと自分で購入した専用ペンは手放さない。プレゼンテーション資料を作成するなど、モバイル機器を駆使して業務の効率化に取り組んでいる。