一瞬、耳を疑った。「セキュリティ営業部を新設して、来月からは君がそのトップを務めてほしい」。内村圭祐さんは、今年3月の半ば、上司にそう命じられた。覚悟を決めて、新しい職に就く準備を短期間で進めた。突然の組織再編の知らせ。シー・エス・イー(CSE)は今年4月、体制を一新し、セキュリティ事業を強化してビジネス拡大に動き出した。内村さんは、部長として、営業メンバーの行動の効率化を図り、独自商材に注力して、経営陣から寄せられた期待に応えようとしている。多忙な一日の動きを内村さんに語ってもらった。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/長谷川博一)
内村 圭祐(うちむら けいすけ)
大学を卒業後、2000年、シー・エス・イーに入社。総務部に配属され、管理業務に携わる。その後、プロダクト販売のマーケティング担当を経て、営業部でセキュリティ製品などのセールスに従事。課長としてリーダーシップを発揮する。その実績が評価され、2014年4月、セキュリティ営業部の新設とともに、同部の部長に就任。12人の部下を統括する。
業務改善に徹してメンバーに効率よく動いてもらう
7:30 すし詰め状態の通勤電車。スマートフォンで部下の日報を読みながら、郊外の自宅から東京・渋谷にあるオフィスに向かう。セキュリティ営業部の立ち上げと新しい方針の実行で昼間はバタバタしていて、日報をじっくりと読む時間がなかなか取れない。だから、通勤の時間を生かして、日報をチェックし、各メンバーにアドバイスや指示を返信する。
私は、今後の営業活動の土台づくりとして、現在、部の業務改善に取り組んでいる。「この表現がわかりにくい。お客様にうかがったニーズをもっと簡潔にまとめて、次にどう動くかを正確に報告してくれ」。実は、メンバーによっては、日報の書き方がかなり雑なときがある。そこで、私は改善策についてうるさく口を出して、部下に、相手はどんな情報を求めているかをきちんと考えたうえで日報を書くマインドをもってもらうようにしている。
9:00 朝一番に部の全員を集めて会議。旧組織では、週に何回も会議を開いて、その影響で、営業活動に使える時間が削られる事態が生じていた。私は今、すべてを一回の会議にまとめて、毎週金曜日の朝に開く会議で、この週を振り返りながら、翌週の行動を決める。さらに、早く結論を出して、会議を必ず、1時間以内に終わらせるというルールをつくって実行している。
14:00 ランチを終えて、部下の相談に乗る。組織再編が突然に決まったこともあって、部下は、具体的にどういうふうに仕事をこなしていけばいいかについて、私に答えを求めている。今朝の会議でも改めて強調したように、営業がやることは基本、これまでと変わらない。ポイントは、営業活動のなかで、ユーザー企業や販売会社のニーズをいかに吸収し、早く提案に反映するか、という意識をもつことだ。
「○○君、先日、ハードウェアメーカーと共同で開催したセミナーの収穫は?」。「○○さん、新商材の提案シナリオを考えて、難しい技術用語を使わずに、パートナーにていねいに説明してくださいね」。部下は、20代の若者もいれば、年配のベテランもいる。私は、各自の個性や強みを考慮して的確に助言することで、新しいかたちの提案に挑戦するように仕向けている。
17:30 うれしいことに、部下の受注祝いをすることになった。先ほどの電話で、約3000人の社員を抱える大きな会社が当社のソリューションの採用を決めたという吉報が入ってきた。部下が、1年以上をかけて、あきらめずに提案をし続けてきた注力案件だったので、チームの全員が喜んだ。
私は今回、初めての部長職を務めることになった。今、マネジメントのやり方についていろいろ模索しているところだ。リーダーとしての能力を発揮し、部下たちの意見を積極的に取り入れて、事業拡大にまい進していきたい。
私の営業方針を表す漢字は……「攻」
当社はこの4月、社長の交代とともに、大幅な組織変更を行った。成長を見込んでいるセキュリティ事業を強化するために、セキュリティ営業部を新設し、私はその部長を担当させてもらうことになった。こうして、会社が新しくなったことを踏まえて、独自の商材をつくり、お客様の課題を解決するソリューションのポートフォリオを創出したい。私はこれまで、お客様に直接関わるのが主な仕事だったが、これからは部長として社内マネジメントに軸足を置き、自分の行動もリニューアルして、セキュリティ事業の拡大をリードしていくぞ!