霞が関のリーダーに核心をただす!

<霞が関のリーダーに核心をただす! IT政策をどう進めるかネックは何か>経済産業省 情報通信機器課長 荒井勝喜 氏 ――ITベンダーへの期待と要請

2014/06/12 16:04

週刊BCN 2014年06月09日vol.1533掲載

語る人
荒井勝喜 氏
経済産業省 情報通信機器課長

プロフィール 1991年、通商産業省入省。1994年、ペンシルバニア大学ウォートン・ビジネススクールに留学し、帰国後、大臣官房広報課長補佐。以後、公正取引委員会経済取引局調整課長補佐、経済産業政策局産業組織課長補佐、製造産業局政策企画委員、経済産業局政策課企画官などを歴任し、昨年7月より現職。


もっと積極的な研究開発・設備投資を!

 ITベンダーには、受託開発型のシステム開発のようなビジネスモデルは崩壊していることを認識していただきたい。ユーザー企業にいわれた通りに独自のシステムや規格をつくり込んでいくのではなく、ITベンダーが標準化されたオープンなプラットフォームをつくり、その上に各種ソフトウェアを組み合わせたかたちでシステムやソリューションを提案しなければならない時代になっている。そうでなければ、時代の変化に対応できるITを提供することは不可能なはずで、ユーザーの利益を担保できない。

 AmazonやGoogleのような企業がクラウド時代のプラットフォームを支配しているわけだが、彼らには勝てないと言っているようではダメ。いま覇権を握っている企業が、いつまでも勝ち続けられるとは限らない。日本企業もそういうポジションを目指さなければならない。

 日本のITベンダーに欠けているのは、研究開発や設備への積極的な投資姿勢だ。リスクを覚悟してお金を使うようなチャレンジをしなければ、世界で覇権を握るビジネスを生み出すことはできないだろう。また、過去の成功体験にすがる硬直した組織体制では、変化の早いITの世界をリードしていくのは難しい。既存ベンダーには、ITベンチャーへの投資やスピンオフなどを含めて、新しい組織に事業を担わせるなどの工夫も必要だと思う。

自動車、ヘルスケア分野のM2M市場は有望

 幸い日本のベンダーには、革新的なデバイスなどを開発するハードの強みはまだ残されている。それを最大限に生かしつつ、ソフトの開発力を今まで以上に磨けば、新しい波にうまく乗ってプラットフォームをつくる道筋もみえてくる。

 具体的に注目してほしいのは、「クリーンデバイス多用途実装戦略事業」でも有望分野として位置づけている、自動車やヘルスケアといった産業での新たなIT活用、すなわちM2M市場だ。例えば自動車分野では自動走行の研究が進んでいるが、普及させるためには安全性の担保が大前提となる。そのためには、各種デバイスの性能を高めるとともに、M2M技術を標準化して、質の高いソフトウェアを組み合わせ、新しい製品・サービスに実装していく必要があるだろう。そうしたモデルが実現できれば、国内でのIT需要喚起だけでなく、国際的な競争力強化にも大いに役立つはずだ。(談)(本多和幸)
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