ユーザー企業、ITベンダーを問わず、日本の企業は海外進出に躍起になっている。かつては大手企業だけだった海外進出が、「必要に迫られて」なのかもしれないが、このところ中堅・中小クラスの企業でも増えてきた。新しい市場の開拓に試行錯誤を繰り返して、悩みながらも前に進もうとしている姿に共感を覚える。

　進出先は中国が一段落して、今は東南アジアがブーム。シンガポールにタイ、ベトナムは相変わらず日系企業の進出が多く、最近ではフィリピンやマレーシア、インドネシアが人気のようだ。ミャンマー、ラオス、カンボジアに着目する人も出てきた。取材を受けてくれる人が同じでも、数か月が経って再び取材すれば、ターゲットとして「力を入れる」という国が変わる。それだけ動きが激しいということの証だろう。闇雲で節操がないように感じて、「腰を据えて一国に集中してみては？」と問いかけたくなる企業もあるが、どこの国であっても、日本企業の海外進出先における成功事例をたくさん見つけたいと私は思っている。

　今年から、本紙の編集方針の一環として、東南アジア諸国の実情と可能性を探るために、本格的に足を運んでいる。2014年でいえば、フィリピン、ミャンマー、タイを訪れた。いずれの国でも現地で働いている日本人は元気で、日本の会社に勤務しているときの日本人にはみられないエネルギーを感じた。

　野心的で意欲的な姿とともに、現地法人の日本人トップに共通していると感じたのは、現地で社長を務める人は、経営の「初心者」で「マルチタスク」を求められるということだ。

　年齢は、30代後半から40代後半で営業畑を長く歩んできた人が多い。売る経験を積んできてはいるものの、経理や総務業務に疎く、役員経験はないという人物像が浮かぶ。

　成功するかどうかの見極めがつかない海外事業に、日本本社は最低限の投資しかしない。そうなると、現地法人の立ち上げ当初は、不慣れな総務と経理業務を、現法の社長が兼務せざるを得ないケースが少なくない。海外事業をやることを決めただけで、あとは現法任せ。支援も乏しく、現地の事情も知らずに本社同様のガバナンスを求める日本の本社幹部。一方で、現地で東奔西走する「総務部長兼経理部長兼社長」。まだまだ改善の余地がありそうだ。