藤原智人さんは、外資系大手のパソコンメーカーをユーザー企業として、パソコンの保守・サポートサービスを提供する営業部隊を率いている。ユニアデックスがサービス事業の強化に取り組む(1~3面に関連記事)なかで、サービスを強く意識して部下の提案活動を束ねる藤原さんの活動は高く評価され、2013年4月に現職に就任した。5代目の部長となる藤原さんは、ハードウェアだけの保守を手がけるこれまでの方針を時代遅れと捉えて、今後、ソフトウェアやクラウド向けのサポートも提供する新たなビジネスを展開しようと動いている。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/長谷川博一)
藤原 智人(ふじわら ともひと)
IT企業でエンジニアとして経験を積み、2003年4月、ユニアデックスに入社。技術者経験を生かした営業担当者として、提案業務などに携わる。13年4月、外資系PCメーカー向け営業部の部長に就任した。部下へのアドバイスや支援などを通じて、現場を指揮している。
感動を受注につなげる
チームが担当している外資系メーカーは、パソコンを中心とするハードウェアからソフトウェアまで、統合的な製品の提供に力を入れている。われわれもそれに合わせて、保守の対象をソフトウェアやクラウドに広げる必要があると捉えている。ちょっと強い表現になってしまうが、ハードウェアだけの保守・サポートは、もう時代遅れ。だから、これまでの方針を一度壊して、大胆に見直したい。私はアイデアを出すのが好きで、会社もそれを認めてくれて、今のポジションに就かせたと思う。部下たちとともに新しい領域を開拓して、会社の期待に応えたい。
6人の部下は、新卒でユニアデックスに入社して、6~7年ほど営業畑を歩んできた20代後半の働き盛りだ。契約の中味でいえば保守案件が非常に多く、ちょっとしたミスが大きなクレームにつながりかねない大口案件も動いていることもあって、彼らは常に緊張感をもって仕事に取り組んでくれるし、忙しく立ち回っている。その多忙な日常のなかでもていねいな顧客対応ができるよう、私が部下に促しているのは、商談の流れを事前に想定して、必要な情報を用意しておくシナリオづくりだ。私自身はきめ細かく準備をしなければ気がすまないタイプだが、若い部下たちは事前準備を軽視しがちなので、お尻を叩いては注意している。
普段は部下の営業訪問に同行することが多いので、シナリオ通りにいけば、部下に「やったね」と目でメッセージを送り、これもシナリオ通りにクロージングに移らせる。シナリオを想定しておいたおかげで、商談の場で発注を決めていただいたこともしばしば。シナリオづくりは確実に成果に結びついていると実感している。
人が動くと、人が感動する──。これが、営業マネージャーとしての私の哲学だ。先日、新領域開拓の一環として、検索エンジンなどのウェブサービスを提供する大手企業に対して、サーバーのリプレースの際に、導入後のメンテナンスサービスを提案した。その企業はこれまで運用・保守を外部に発注したことがなかったので慎重だった。「ユニアデックスに頼むメリットは何ですか」と突っ込まれたが、私は部下とともに、「メンテナンスを弊社に任せていただければ、運用費をこのくらい削減できます」と、明確に数字を伝えて納得してもらい、受注にこぎ着けた。商談の最後にお客様から「サービスを切り口にした提案を受けたのは初めてだ」と言われ、お客様の「感動」を実感した。
準備を重視する私だから、情報の管理も工夫している。日程などを書き込むノートのページを四つの欄に分け、それぞれに何の作業をいつまでにこなさなければならないかなどを書き入れて、終わったら赤ペンでチェックする。お客様が私のノートを見て、「ぜひ、うちの新人にも教えてほしい」と依頼されることもあって、情報管理のやり方が営業のネタにもなっている。「芸は身を助く」ということわざがあるように、自分の武器にしていきたい。
私の営業方針を表す漢字は……「間」
お客様や部下と話すときに、会話の「間」を大切にしている。自分が話すときに、折々に2~3秒の間を置けば、相手に強い印象を与えることができ、その結果、内容をより深く考えてもらうようになるからだ。「間」という字は、「時間」にも「人間」にも入っている。私は日頃、提案の各段階で社内外のあらゆる人たちに接するので、常に「間」をコントロールすることを意識している。