小林康憲さんは、サン・マイクロシステムズ(現日本オラクル)で16年間、パートナービジネスの立ち上げと拡大に携わった後、デル、マカフィー、レッドハットという大手外資系で営業マネージャーの職を歴任。この7月、セキュリティ事業のソフォスに入り、パートナー販売を中心とする「新生ソフォス」の体制づくりを率いている。「まだ比率が低い日本事業の売り上げを10%以上に引き上げて、将来、会社を上場させたい」と意気込む小林さんに、営業活動のコツを語ってもらった。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/津島隆雄)
小林 康憲(こばやし やすのり)
中央大学を卒業後、ミニコンピュータ(ミニコン)メーカーを経て、1988年、サン・マイクロシステムズ(現日本オラクル)に入社。パートナービジネスの立ち上げに携わる。2004年、デルに転職し、サーバー営業部門のディレクターを務める。その後、マカフィー、レッドハットを経て、今年7月にソフォスに入社。20人の部下を統括する。
間接販売の腕を磨き、今はソフォスで活躍
●まずは組織づくりをしっかりと 当社は、今年前半、社長交代や本社移転などを行って、新たなスタートを切った。私は7月に入社し、営業統括本部の統括本部長に就いた。これまでの約3か月で取り組んできたのは、部下たちの担当領域をはっきり定める組織づくりだ。「ディストリビュータ」「SIer」「アカウント」「インサイド(内勤営業)」「OEM」の五つの部隊を設けて、20人いる部下をそれぞれに配置した。これによって、チャネルを強化する体制は整備できた。部下を動かし、事業を拡大するためには、全員が明確なミッションをもつことが大事。今、掲げているのは、これまでほとんど接点がなかったメーカー系のSIerを攻め、当社の販社になってもらうことだ。五つの部隊の間で「夢」と「目標」を共有して、どんどんパートナーを開拓したい。
●「ティーチ」ではなく「コーチ」 入社してみて、ソフォスには、部下が上司に相談し、力を合わせて課題を解決する文化が根づいていないと感じた。そこで、力を入れたのが、明るくアットホームな雰囲気をつくり、部下が私に相談しやすい環境を整えることだった。幹部ではない部下は人脈が乏しいので、トップ層に会うことが難しい。これが、提案活動のハードルになっている。人脈づくりは、25年以上、IT業界で働く私の得意とするところ。サン・マイクロシステムズの頃は、主要パートナー30~40社を、私一人で担当していた。この時代に培った人脈を生かして、キーパーソンに面談予約を取りつけ、部下といっしょに訪問している。
商談を通じて、SIerのどのようなニーズに対して、どんな提案をすればいいかのパターンを部下に伝え、今後、自立して活動できるよう、コーチングを行っている。ポイントは、答えを「教える」のではなく、部下に自分で「考える」場を与え、答えに導くことだ。最近、部下たちが相談に来ることが多くなってきた。笑顔と笑いを大切にして、「アドバイスを求める」文化を根づかせたい。
●お金で買えない「仲間」をもつ こんなに日焼けしているのは、休日をゴルフ場で過ごしているから。最近は、沖縄や軽井沢に行った。私はゴルフを活用して、一つの屋根の下で働き、一緒に汗を流したこれまでの仲間──今は経営幹部になっている人も多い──との交流を続けている。仲間からのアドバイスは、お金では買うことができない貴重なものだ。ソフォスへの入社を決めたとき、多くの仲間が「正しい判断」と、エールを送ってくれた。きっと、「小林さん、何かやってくれるね」という期待を込めてだろう(笑)。大切にしている仲間とのつながりで、お互いがビジネスチャンスをつかむよう、交流を深めたい。
私の営業方針を表す漢字は……「解」
営業マネージャーとして大切にしているのは、昔、上司に教えてもらったこと。お客様や部下にとって「トラステッド・アドバイザー」、つまり、信頼して気軽に相談できる人になることだ。例えば、部下が課題に直面したとき、それを解決するためにはどうしたらいいのか、本人に考えさせたり、情報を提供したりすることによって「解」に導くようにしている。長くこの業界にいるので、いろいろな人脈や情報をもっている。これを生かして、今後もお客様や部下の相談役でありたい。