ようやく府省横断のカタログサイトを開設
IT投資の直接効果が年間1兆~1.5兆円、経済波及効果は同じく5.5兆円ともいわれる「オープンデータ」。政府のIT戦略「世界最先端IT国家創造宣言」では、ITを活用して国内の経済を活性化する施策として、一丁目一番地に据えた。具体的には、まず全府省でデータカタログサイトを整備する方針が掲げられたが、これはすでに完了。さらに、この1年の間で、国のIT施策の司令塔である内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室が中心となって、全府省のオープンデータを横断して検索できるデータカタログサイト「DATA.GO.JP」を構築し、今年10月1日に正式に稼働した。政府は世界最先端IT国家創造宣言の改定にあたって、このDATA.GO.JPをプラットフォームと位置づけ、オープンデータの流通を加速する方針を打ち出した。

府省横断のオープンデータカタログサイト「DATA.GO.JP」強制力のある施策は、いまだ実現せず
しかし、大きな課題は依然として残る。各府省のデータを横断して使えるようにするという強制力のある施策がまだないのだ。政府は、オープンデータの利活用を促進するために、自由な二次利用を認め、それに適したデータ形式で情報を公開するための「政府標準利用規約」という統一の規約を定め、各府省に適用を促している。しかし、この規約を受け入れるかどうかの判断は、各府省に委ねられている。とくに、外務省や防衛省など、機密情報を扱う省は慎重な姿勢をみせており、データカタログサイトはつくっても、限定的な情報しか得られないケースもある。
また、地方公共団体のオープンデータ化促進を明文化したことも、改定の大きなポイントだ。経済産業省の幹部も、民間事業者のビジネスにとって価値のある情報は、国よりも地方自治体のほうに多く眠っていると指摘する。ただし、これも国が強制力をもった施策を展開するのは難しい。まずはオープンデータ化を進めるためのガイドラインの策定や、先進事例の周知による水平展開を目指す。
DATA.GO.JPには、民間から広く意見を募集するコーナーもあり、政府はここから吸い上げた意見を優先的に検討し、今後のデータ整備に反映していく予定だ。オープンデータをどうビジネスにつなげるべきか、国もまだ十分な知見をもっていないからこそ、ITベンダーがここで積極的に意見を発信すれば、市場づくりを先導することができそうだ。(本多和幸)