『週刊BCN』11月3日号（vol.1553）の表紙を飾っていたのは、岐阜県の情報産業を代表する電算システムの代表取締役社長の田中靖哲さんであった。御神輿を背景に、凛として立つ田中さんの姿は、実に美しかった。それを見た瞬間、浮かんだ言葉は、「おお、ソフトピアだ。かっこいい」であった。

　電算システムは、ソフトピアジャパンができた1994年以前から岐阜県で活躍する大手企業で、ソフトピアジャパンの創立から4年後の1998年に、このエリアにテクノセンターを設置し、地域の発展に大きな貢献をしている。というわけで、「おお、ソフトピアだ」という喜びの言葉は、若干、我田引水で手前味噌の感がなきにしもあらずだが、電算システムがソフトピアエリアで活躍するトップランナーであることへの深い感謝を表明した言葉である。ソフトピアエリアで最初の上場会社となり、その後も躍進して、この地にしっかりと根を下ろして成長を続ける企業が存在することは、ソフトピアのメンバーとしては大きな誇りであり、励みなのである。以前、宮地正直さん（現会長）に会うたびに、「ソフトピアに来て、何かいいことあるのかな」と、独特の厳しい励ましの言葉をいただき、そのつど恐縮しながら、ソフトピアのベンチャー企業支援に全力を尽くさなければ、と身も心も引き締まる思いがしたものである。

　時がたち、現在、ソフトピアのベンチャー企業たちは、そのユニークさにおいて十分に実力を発揮するようになり、成長曲線を上る段階に至りつつある。そこには情報と芸術の融合を目指した情報科学芸術大学院大学（IAMAS）を核に、そこから起業したベンチャーたちが、電算システムをはじめ、いくつかの地元の大手企業と協働してプロジェクトを行うなど、共存しながら成長してきている。ソフトピアは、大手の老舗企業とベンチャー企業との融合から、さらに次の新しい展開のビジョンを描き、飛躍するためのシードを育て、岐阜県らしい個性をもった企業文化の創発を目指している。

　歴史ある風土のなかで大手企業が安定した包容力を発揮し、また一方で未知の世界への挑戦を目指すベンチャーが威勢のよい行動力を発揮するとき、しかもそこに両者が相互に触発しあう公的な場を共有するとき、自生的な地域創生のスイッチが入るはずである。地方創生に必要なのは、このスイッチを入れる場をいかに創出するかである。