ITビジネスに限らず、日中間のビジネスは「日本から中国へ発注（中国生産）」という流れが大半である。しかし、日本側は、その成果物の「すり合わせ作業」に奔走させられることが非常に多く、若者でも白髪が増えたという苦労話をよく耳にする。事前確認を重ねた納期を平気で遅延するし、品質問題、注文通りでない商品、そのうえ「今すぐ全額支払わないなら納品できない」などといった無茶な要求が届いたりもする。また、ようやく相手先が落ち着いてきたと思ったら、作業部隊の突然の離職によって振り出しに戻るというような事例もある。

　日本人は、相手が外国人（中国人）とはいえ、見た目の違和感（違い）は少なく、しかも日本語が非常に堪能でコミュニケーション力のある人を相手にすれば、「要求はすべて伝わっている」と、無意識に「日本のビジネス常識」を期待してしまう。そのため、「なぜこんなにも話が違うのか」と落胆させられることが多い。いわゆる、「カントリーリスク」の一つともいわれているが、実際、日本を一歩出ると、ほとんどの国で類似のケースが存在し、コストダウンを図る代償リスクとしては当然だともいえる。

　中国側としては、円安で利益率が下がり、その割に高い要求（過度の連絡・確認など）を求める日系企業を煙たがる企業も少なくない。一方で、日本人の勤勉さ・技術力・品質を「すばらしい」と認め、それに近づけようと尽力する企業の意識改革なども進み、比較的優良といえる企業が増えているのも実際のところだ。

　広い中国での優良企業探しは容易でないが、（1）「基本的な事前調査（企業実態/実績や経営状況/風評など）の確認」、（2）「ランク付け（品質/スピード/修正対応など）による、注文内容に応じた発注先の振り分け」、（3）「双方の協議・了承を得た確実な契約締結（明確な品質基準/納期厳守/遅延ペナルティ/修正対応/進捗状況の報告義務など）」、（4）「締結で安心せず、それがスタートという認識」──これらが、リスク回避の重要なポイントになる。

　日本企業との取引実績を外部に強くアピールする中国企業が少なくない。つまり、その実績が世界に通用する、箔がつくという認識が高まっている実情を有効に生かし、日本側も同等に努力して相互理解をさらに深め、言動の差異を縮めることが成功の鍵を握る。