政治問題はともかく、ビジネス面における日中間の関係は切っても切れないモノになっている。最近は中国人観光客の「爆買い」現象に関する報道がよく見られるが、これは、中国人の金銭感覚の変化、中国内の物価上昇、為替などの原因もある一方、日本の商品・サービスに対する『安心感』が大きなカギとなっていると思われる。

　日本商品・サービスに対するイメージとして、（1）本物、（2）安全（とくに食品・化粧品・薬品）、（3）費用対効果（デザインや機能性における満足度）などが挙げられている。　このような中国人の「信頼、安全、質」に対する意識の変化は、ビジネス界でも同様にみられるようになってきた。ただし、未だ駆け足の段階ではあるので、とくにIT業界のような「技術」や「機密保持」が命ともいえる企業との取引・提携においては、やはり慎重な事前信用チェックが重要である。具体的には、以下のような項目になろう。

1．経営者のビジネス感覚（常識）
　中国では経営者の決定権が非常に大きく、ビジネスの重要要素である「契約遵守、品質・納期、顧客対応」においても、本人に備わっている感覚次第ともいえる。

　IT企業には初代（創業者）の若い経営者が多いが、海外経験や外国企業との取引実績をもつ経営者の場合、この感覚がよりグローバル化しており、相互理解の姿勢をみせる傾向がうかがえる。

2．社員の定着率
　中国のIT業界の定着率は非常に低い。そのため、技術やノウハウの蓄積が困難であり、情報・機密漏えいのリスクも大きいといえる。定着率を高める福利厚生、ストックオプションなどの設定も確認するとよい。

3．社内管理制度
　中国でも情報漏えい防止策の関心は高まってきてはいるが、その浸透度や理解度はまだまだ乏しいようだ。社内制度（雇用契約、就業規則、秘密保持、競業避止契約など）の完備・運用、セキュリティ管理（権限管理、情報漏えい防止対策など）の状況も確認のポイントである。

　企業を訪問する際に大切なのは、作業現場や社員の様子を観察して社風を感じ取ったり、経営者や幹部にヒアリングをして、どれだけ『安心感』を得ることができるかだ。目には見えないこの感覚が重要なのである。