宮崎市の南日本ネットワークは、自治体向けのネットワーク構築に強みを持つ。顧客は100%宮崎県内で、行政を中心したシステムの安定稼働に長年貢献している。人口減少が進む地元で、セキュリティー運用サービスなどのIT面で人材不足をサポートし、ビジネスの成長につなげていく考えだ。
(取材・文/堀 茜)
自治体、文教に強み
――事業内容の紹介を。
ネットワークインフラやサーバーの構築、それに関わるセキュリティー、受託開発が事業の柱になる。創業のきっかけが宮崎県庁の防災ネットワーク構築だったこともあり、県庁を中心とした公官庁や自治体向けに大きく売り上げが立っている。また学校など文教向けにもビジネスを展開している。学校向けにはGIGA端末の提供だけでなく、付随して必要になるネットワークや校務システムも一貫して提案できるのが強み。公共、文教で売り上げの8割ほどを占めている。
――顧客の地域特性は。
100%宮崎県内だ。当社は自治体向けの業務を多く担っており、運用保守によって行政システムを止めずに守り続けるのが大きな役割だと考えている。防災関連など県のシステムは各市町村にも入っているが、宮崎県は南北に広い県域があり、遠方の自治体でトラブルがあった際でも迅速に対応している。
セキュリティーで人材不足に対応
――宮崎県内のDXへの需要をどう見るか。
人口減少が顕著で、公務員でもなり手が少ないエリアもある。ITによって省力化や業務効率化を図らなければならないという意識は高まっており、宮崎県が主導するDX相談センターにも多く問い合わせがあるようだ。当社としては、相談をいただいたら顧客の状況を分析した上で、ネットワークやセキュリティーといった得意分野で最適なものを提案している。
代表取締役社長
福永 修
――セキュリティー対策への意識は。
ランサムウェアによる被害のニュースが多く報じられる中で、エンドポイントの対策としてEDR(Endpoint Detection and Response)が必要だという意識は高まっている。一方で、企業の担当者は入れたいと思っていても、経営者に伝わらず導入してもらえないケースもあるので、メーカーと協力し、EDRの有用性を伝える経営者向けの勉強会を実施している。
今後、取り組みたいと思っているのが、MDR(Managed Detection and Response)サービスだ。セキュリティー製品の運用は、情報システム部門の担当者に大きく頼っているのが現状だが、そういった人材が確保できない企業をどう支援するかが一番の課題になっている。最新のセキュリティーソリューションを入れて脅威を検知しても、対応ができなければ宝の持ち腐れになってしまう。運用をサポートすることで、セキュリティー領域での強みを高めていきたい。
――受託開発のニーズはどうか。
継続して受注している。大学の入試システムや学生管理システムなどが多い。製造業で工場の在庫や部品管理システムなどを開発する場合は、現場での使い勝手が良いようにタブレット向けに構築している。
受託開発の課題は、属人化してしまう点だ。システムに何かトラブルがあった時に、開発者でないと対応できないという状況を改善する必要があり、引き継いだ人でもメンテナンスができるよう、社内で標準化する取り組みを進めている。属人化解消のために、業務経過を必ずドキュメントで残し、ノーコードツールを使って最適な仕組みを考えている。
付加価値で満足度を高める
――ビジネス成長に向けどんなことに取り組むか。
生産労働人口が減り続ける中で、業務における生成AIの活用を顧客にどう提案していくかという点は今後の課題になってくる。生成AIの活用は部分的な試行が行われているが、全般的な適用はまだこれからの段階だ。データをどの程度整えればいいかという検証も必要だし、当社の顧客の大部分を占める公共向けの場合、セキュリティーが最重視される。オンプレミスのサーバーを使うなど、データの保守性を担保した上での取り組みを模索していくことになる。
エンジニアの人材確保には苦労している。他業界からの中途採用で、eラーニングシステムでのスキルアップを図っているほか、エンジニアの年齢バランスを考え新卒採用もしていきたい。
――今後の展望を。
ネットワークの進化とともに、当社も成長を目指していく。ネットワークは黒子のような存在だが、地元の自治体や企業をしっかりサポートしていくのが当社の役割だと考えている。セキュリティーは重要だが、がちがちに固めすぎると使いづらくなってしまう面もあり、可能な限り利用者の使い勝手がいい環境を提供していく。小さな会社だが、お客様に最新の技術を使ったサービスで付加価値を提供していくことで、顧客の満足度を高めていきたい。
Company Information
1995年創業。本社は宮崎市。ネットワークインフラの構築・運用、セキュリティー対策支援、業務システムの受託開発などを手掛ける。従業員数は31人。