フリーは「統合型」プロダクトを軸に、バックオフィス業務を幅広く支援し、パートナーとの連携を通じて中小企業を中心にDXを推進している。業務効率化だけでなく経営課題の解決にまで踏み込む方針を示す同社では、パートナーとのプロダクト連携による相乗効果を重要視するほか、他業種とのアライアンスにも積極的な姿勢を見せる。(大向琴音)
多くの事業部に提案可能
フリーの強みはプロダクトの広さにある。統合型というコンセプトで、会計だけでなくバックオフィス全体にわたるさまざまなプロダクトを用意することで、ユーザーは必要な機能からスモールスタートできるのが特徴だ。加えて、フリーのプロダクトは複数使うと利便性がより高まるつくりになっており、執行役員CBDOの川西諭・事業開発・アライアンス事業グループ長は、「パートナーの目線に置き換えると、(顧客企業の)多くの事業部に提案が可能というメリットにつながっていく」と説明する。
近年のAI活用の需要への対応という観点では、AIを使うにはデータがきちんと整理されていることが重要であることから、バックオフィスツール(フリーのプロダクト上)に業務データが集約されている状態は、今後のAI活用のための“基盤”になり得る。加えて、フリーはプロダクト自体へのAI実装も推進している。そのため、パートナーがフリーを提案することで顧客に最新のAI機能を使ってもらえるようになり、DX推進にもつながる。川西執行役員CBDOは「情報収集が難しい人でも、パートナーを介することで、最新のDXに関する情報を得ることができる。(そういう意味で)パートナーは、“DXの伝道師”だと考えている。」と述べる。
川西諭・執行役員CBDO
プロダクト連携の強みを発揮
フリーでは、「オープンAPI」というスタンスを取っており、他社とのプロダクト間連携が多岐にわたる。ディストリビューターなどの一般的な販売パートナーはもちろんのこと、プロダクトの連携を通じて互いに相乗効果が見込める企業も販売パートナーとして、協力しながら展開している。
川西執行役員CBDOによると、パートナービジネスを展開する上で重要視するのは、「パートナーの本業に対してどのような関わり方ができるのかどうか」。パートナーにとってフリーの製品を展開していくことは本業ではないことから、単に販売パートナーというより、フリーと連携することでどんなシナジーを生み出せるかという視点が大切となる。だからこそ、プロダクトの紹介にとどまらず、パートナー企業が取り扱っている商材とフリーのプロダクトを具体的にどのようにつなげて展開できるかといった部分の説明まで行っている。
フリーは5月に開催したイベント「freee TOGO World 2025」で、単なるバックオフィス効率化にとどまらず、経営課題まで踏み込んでいく姿勢を示した。一般的に、企業における事業が一定の規模を超えると、経営者が事業部門や財務部門を直接的に管理することが難しくなる。そのため、データを可視化して間接的に管理できる仕組みが必要となる。川西執行役員CBDOは「フリーのようなプロダクトがあれば、経営をより容易に管理できるようになっていくだろうし、そこにAIを組み合わせることでより定量的な経営判断が可能になる。今後パートナーには、このような観点でプロダクトを取り扱ってもらうようになると思う」と分析する。
さまざまな業種とのアライアンスへ
今後のパートナーとの連携について、「フリーだけでは(価値の提供が)難しく、かつ顧客が本当に困っている部分を見つけて、そこに対して“このシステムとフリーがつながっていたら便利だよね”というような連携を実現していきたい」(川西執行役員CBDO)と述べる。例えば、業種ごとに使われている特有のシステムとフリーを連携させるなどを方策の一つとして挙げた。この時、フリーの強みを増やすだけでなく、連携先プロダクトの価値も高まるような連携の仕組みを一つずつ丁寧につくることが大切だという。
例えば、同社は金融機関ではないため融資ができないが、融資の際に必要となる事業データを持つ。池田泉州ホールディングスが設立したデジタルバンクの01銀行では、「freee入出金管理」のデータを活用して企業の資金状況を把握し、融資判断や債権回収を行っている。このようなかたちで、金融機関も含めたさまざまな業種とのアライアンスを通じて、フリーのサービスを広げていきたいとした。