〈企業概要〉
独Staffbase(スタッフベース)は2014年に設立。グローバルで2500社を超える顧客を持つ。イントラネットや従業員向けモバイルアプリなどを提供する。国内では25年3月にサービス提供を開始した。
独Staffbase(スタッフベース)はイントラネットやモバイルアプリといった製品の提供で、現場で働く従業員のエンゲージメントや生産性の向上を支援している。同社は2025年3月に国内市場でビジネスを開始し、製造の大企業を中心に顧客の獲得が進んでいる。モバイルアプリをDXの入り口として活用する市場の形成に向けてパートナーとの協業を推進し、国内市場での飛躍を目指している。
(取材・文/大畑直悠)
コミュニケーションギャップをなくす
スタッフベースが提供する製品は、製造業の支援が起点となっている。本社のデスクワーカーが、工場で働く非デスクワーカーと円滑にコミュニケーションを取るためのツールとして誕生した。国内市場でのビジネスを統括する赤平百合・日本支社長は「本社経営層の方針が現場まで浸透しないことや、逆に現場の従業員の声が経営層まで届かないといったコミュニケーションギャップを解消するのが狙い。離職や、モチベーションの低下を防ぐためにつくられた」と説明する。
赤平百合 支社長
顧客の大多数は同社が提供するイントラネットや、従業員向けに情報共有などができるモバイルアプリ、社内報などを送付するメールを組み合わせて利用しており、現場の従業員はモバイルアプリからイントラネットなどにアクセスできる。
モバイルアプリは各従業員の職種や働く場所に合わせてカスタマイズされた情報を発信する仕組みを構築できる点が強み。例えば、工場のマネジメントを担う従業員であれば、施設内の安全確保や災害関連の情報がまとまった画面が表示される。言語に関しても英語や日本語など、柔軟に設定できる。それぞれのサービスのロゴなどを企業ブランドに合わせて柔軟にカスタマイズできる点も特徴だ。
本社からの情報発信が一方的にならないようにする機能も備える。配信したコンテンツが読まれているか把握できるほか、投稿した記事に従業員が付けたコメントやリアクションを分析することにより、本社が共有した戦略に対する理解や反応を測れる。このほかアンケートを実施する機能なども備える。イントラネットに関しては「SharePoint」などに分散して格納されたデータを横断的に検索する機能などで情報のサイロ化を防止する。
主な顧客層としては従業員が数万~数十万人規模の大企業に利用されており、製造業のほかにも流通や小売りといった業界でも導入が広がっている。
業務アプリの入り口に
今後の販売戦略としては、さまざまな外部ソリューションとの連携機能を訴える。提供するモバイルアプリは「Teams」「Slack」といったコラボレーションツールや、米ServiceNow(サービスナウ)製品、米Workday(ワークデイ)製品など多様な業務支援ソリューションとの統合が可能。単に情報収集するだけではなく、同社のモバイルアプリを入り口として申請できるなどさまざまな業務を遂行できる。
赤平支社長は「営業で重視しているのは、従業員エンゲージメントの向上を担うグローバルコミュニケーションや人事に加え、DX推進の3部門と会話することだ。イントラネットを提供するだけの会社としてではなく、分散したツールを一元化して従業員の生産性向上にも貢献できることを説明している」と話す。その上で、「朝、モバイルアプリを開くと、必要な情報もツールも全てそろっているという世界を提供できる」(赤平支社長)とアピールする。
今後の製品の普及には、現場従業員の業務効率化、エンゲージメントの向上にモバイルアプリを活用する文化を国内市場で定着させることが肝になると見ている。赤平支社長は「社用携帯を全従業員に貸与するのは難しいという企業もある。ただ、現場従業員の離職率の低下や業務改善にモバイルアプリの活用を突破口とみる企業は多い。当社サービスの検討と同時にBYOD(Bring your own device)環境の構築を検証してくれる顧客もいる」と話す。まずは国内の大企業向けの事例を積み上げて、同社サービスの有効性の認知を図る構えだ。将来的には中堅企業への拡販も視野に入れる。
国内企業とのパートナーシップの構築にも注力する。25年8月には電通総研とのパートナー契約を締結。電通総研は今後、社内コミュニケーションのコンサルティングや製品の導入支援、運用・保守、コンテンツ制作まで一貫したサポートを提供する。今後も新規パートナーの獲得を目指す考えで、赤平支社長は「BYODの検証なども含め、顧客のトータル支援で一緒に日本市場を開拓するパートナーと連携したい」と呼び掛ける。
また、コンテンツ制作の部分に関してもコンサルティングの提供といった顧客支援を行うほか、PR会社などのコンテンツメーカーとの協業も進めていく。