宮崎市に本社を置くアシストユウは、CAD事業からスタートし、電気設備業に特化したITシステムで成長を続けてきた。現在は東京に支店を置き、ITシステムソリューションとネットワークカメラの2事業を展開する。小幡祐己社長は宮崎から全国、世界への躍進を目指す。
(取材・文/南雲亮平)
ITシステムとカメラで成長
――事業の紹介を。
当社はCADを使った電気設備の工事支援からスタートしている。最初は施工図の製作などを請け負っていたが、電気事業者が社内で設計をできるようになり始めてからは、CADの使い方を教える側に転身。多くの企業にCADを使える人材がそろってきた頃には、図面からそのまま工事に必要な材料の種類や量、工数、機材の使用料などを洗い出す作業や、見積もり・精算、原価などを一元管理したいとの要望が挙がってきて、そうしたニーズに応えるかたちで事業が発展してきた。
現在は、電気業者向けの事業を大きく二つ展開している。一つは、電気設備用に特化したITシステム事業。見積もり・精算、原価管理、労務管理といった工事管理ソリューションの提供から導入、運用サポートなどを行っている。電気設備工事に携わる事業者が対象で、宮崎県内では8割ほどの事業者と付き合いがある。
もう一つは、屋外ネットワークカメラの販売と導入・運用支援。こちらも電気事業者の支援から発展した。工事現場をはじめとした屋外の防犯体制の強化や現場管理業務の効率化を進めている。
――事業における強みは何か。
ITシステム事業については、30年間続ける中で蓄積したノウハウが強み。宮崎県にはIT全般をサポートできる企業があまりないので、PCの導入から、提供する先にあわせたソフトウェアのカスタマイズ、サーバーの設定など、カバー範囲が広い点も特徴になっている。
カメラ事業については、カメラにSIMカードを内蔵しているため、配線工事が不要で、電源さえあれば簡単に設置・移動できる点が強み。暑い夏や寒い冬といった過酷な環境でも使用できる耐久性もある。また、圧縮することなく生のデータを送信できるよう、映像の画素数を130~200万に設定している。500万画素の映像はスペックだけ見れば高精細だが、データとしては大容量になるため、圧縮して送ることになってしまう。その結果、精細を欠く映像になり、分析なども難しくなる。だからこそ、あえて画素数を抑えることで、圧縮などの加工をすることなくデータを送れるようにしている。
顧客と伴走する開発
――ビジネス概況について。
カメラで工事現場を撮影することに対して、最初はプライバシーなどの理由から拒否感が強かったが、ドライブレコーダーが普及して、撮影されることが自らを守ることにもつながるとの認識が広がると、徐々に受け入れられるようになった。ネットワーク回線の進化も大きく影響している。3G回線を利用していた頃は送信できる映像に限りがあったが、LTEになり通信が安定したことで利用が拡大した。今では工事現場だけでなく、観光名所やイベントの中継、インフラの監視などで導入されている。
小幡祐己 社長
工事現場以外の事例として、水田のDXを支援した。水田に水を入れる際に、山にある水門を操作する必要があるが、高齢化が進んでおり、1日に何度も山を上り下りするのは負担が大きい。そこで、水門にあるポンプの制御装置と、水田の様子を確認するカメラを接続し、事務所にいながらポンプのオン/オフができる仕組みを構築した。
こうしたソリューションは、お客様からの「こんなことできる?」といった問いかけから始めることが多い。難しくニッチな内容もあるが、需要はある。鉄道会社から受託した開発案件では、点検車に載せるAIを一から開発した。個社ごとに寄り添うビジネスが求められていると感じる。
――販売拡大に向けて。
全国のパートナーと協力して販売しているが、これまでは顧客ごとの状況を詳細に把握できていなかった。今後は、困りごとのある企業を一緒に訪問してヒアリングするなど、エンドユーザーと直接関わる機会を増やせる体制にシフトしていきたい。マーケティングにも力を入れ始めており、ホームページを刷新し、事例なども掲載していく。
――今後の目標は。
ITシステムソリューション事業については地域密着型で、宮崎で最後までやり抜く。とにかく「何かITや機械的なことで分からなければ、アシストユウに連絡すれば解決してくれる」という立ち位置でいたい。現在は電気関連が中心だが、土木業界への仕掛けなども始めている。システムの中身は異なっても、PCやサーバー周りの仕組みは大体一緒なので、ソフトを変えれば対応できる。宮崎で困っている全ての業者をうまくサポートできるようにすることが目標だ。
カメラ事業においては、地方から海外まで進出できる成功事例をつくりたい。海外に行ってみると、有線やWi-Fiカメラが多い現状だが、通信環境の整備が不要なモバイル通信を使ったカメラの強みには確かなニーズがある。海外展開は、事業を大きくしていくための重要なポイントだと認識している。
Company Information
1994年に宮崎県日向市で創業。電気設備業向けにCAD事業を展開する。96年、宮崎市に移転。2006年にネットワークカメラの開発に着手し、14年から東京で事業を開始。23年に社長交代で現体制に。25年4月現在の従業員数は8人。