福岡市に本社を置き、九州で電力供給の関連システム事業を展開するQsol。高い信頼性が要求される電力向けの大規模システムに軸足を置きながら、一般市場でも航空・製造業向けソリューションの浸透を目指している。廣渡健社長は「全社一丸となり10年後までに売上高500億円を達成したい」と意気込む。
(取材・文/下澤 悠)
信頼性と技術力に強み
――事業の紹介を。
九州電力と九電グループの電力供給に関わる業務システムの開発から運用・保守・サポートまでを担ってきた。一般企業に対しても、航空業や製造業向けのアプリケーションを提供している。
航空業界向けソリューションの「NAST」は、部品管理など整備部門向けの情報と飛行の計画や記録など運航部門向けの情報を連携し、一元的に管理できるのが特徴だ。製造業向けには「GROTRY(グラトリー)」を提供し、われわれの持つAIなどの知見を生かして工場の生産管理をより効率的にするシステムを推進している。当社の基軸は九電グループ向けであり、売り上げに占める一般向けの割合は現在10%ほどだが、こちらも事業の第二の柱となるよう伸ばしていきたい。
――強みは何か。
電力向け事業に長年携わってきたことで、非常に高い信頼性を求められてきた。電力関連の情報システムを熟知しており、また技術力の高さが強みだ。併せて、長年グループ内のヘリコプター会社のシステム開発・利用を共同で続けてきたため、そこで得た航空業務の知見をNASTに反映している。取引先は大手航空会社にも広がった。システムのコンサルティングからインフラ構築、ソフト開発、運用管理やセキュリティーまで一貫して提供できる点も強みだと言える。
セキュリティーが需要増、AIでも実績
――地元企業の関心が高いIT分野は何か。
近年は特にサイバー攻撃の事案が多く、セキュリティーに関心が高い。またクラウドを含むITインフラの構築も、専門的な知識が必要なため当社への期待を感じる。九電本体のセキュリティーシステムは現在当社が請け負っているが、今後グループ全体でセキュリティーを高めていくことになった際もしっかり対応していきたい。
廣渡 健 社長
――持続的な成長のために課題になることは何か。
まずは、やはりIT人材の確保だ。採用や定着のためにも、働きやすく魅力的な環境にする必要がある。4年連続で健康経営優良法人の「ホワイト500」(大規模法人部門の上位500法人)を取得しており、調査では社員の満足度も上がっているので取り組みを強化したい。採用と営業、両方の活動につながるよう、一般向けに当社を認知してもらう活動も進めなければいけない。
もう一つは、生産性と品質のさらなる向上だ。新技術などを生かしてQsol自身の生産力を上げ、協力会社とのパートナーシップを高める。多くのシステムが更新時期を迎えて仕事がどんどん増えており、体制強化して確実に対応できるようにしたい。情報セキュリティー対策の強化も必要だ。
――AIソリューションに力を入れている。有望な芽はあるか。
製造業向けソリューションであるGROTRY内の、設備の負荷を考慮しながら生産スケジュールを最適化する「AIスケジューラー機能」が好評で、引き合いが来ている。また、医療現場における文書作成や治療方針立案などの管理業務を、AIで補助する研究を進めている。24年から熊本大学と取り組んでおり、今後も共同研究を継続し、さらに精度を上げて実用化につなげたい。ほかには、九州電力が提供している電力ケーブルの劣化診断サービスで、核となる診断AIモデルを当社が開発した。こうしたかたちでも技術展開できるといい。
伴走型支援へシフト
――将来的な事業の構想を。
24年に創立20周年を迎え、35年までの10年間で目指す経営ビジョンを策定した。九電グループ全体の価値向上と合わせて、売り上げを現在の約2倍の500億円にし、認知度なども含めて九州トップのICT企業を目指す。お客様に寄り添った企画提案や伴走型支援に取り組みたい。
――受託型から伴走型へビジネスをシフトするには、社員の考え方や事業構造も変えていかなければならないのでは。
確かに、一般向け事業の競争の世界で「仕事を勝ち取ってくる」という意識がまだ乏しい部分があり、変えていく必要がある。一方で、特に電力関係の業務を担ってきたことから、仕事をしっかり確実にこなす風土があり、一般向け事業でも高い信頼性を磨いていきたい。
――今後の展望と意気込みを。
24年に九州電力送配電から当社の社長に就任し、若手が生き生きと頑張る明るい職場だと感じている。さらに風通しの良い会社にするため、社員全員と語る会を設けている。35年までの売り上げ目標は高いハードルだが、全社一丸となって取り組み必ず実現できると考えている。
Company Information
九州電力傘下のニシム電子工業の電算部門と九電情報サービスが合併し、2004年に九州ビジネスソリューションズとして設立。23年にQsolへと社名変更した。九電グループの電力供給に関わる業務システムの開発や運用・監視・保守・サポートを行うほか、航空・製造業などに向けたソリューションも提供。24年度の売上高は約260億円。25年4月1日時点の従業員数は710人(役員除く)。06年にRKKCS(熊本市)と資本業務提携を締結。