どれほど人柄が良くても、数字を達成できない営業は本物ではない。いかなる状況でも数字をつくる。それが営業の矜持だ。だからといって「手段を選ばず売り込めばいい」ということにはならない。
数字をつくりたければ、儲けようとしてはいけない。ここで必要となるのが、「知識力」だ。知識力とは、自社製品のスペックを暗記していることや、業界用語を知っていることではない。これは、以下の三つに分解できる。
・語彙力:微妙なニュアンスを言語化し、相手の心に届く言葉を選ぶ力
・読解力:相手の発言の意図、背景、行間を正しく読み解く力
・質問力:相手自身も気づいていない本質的な課題を聞き出す力
つまり、知識力とは、「顧客の断片的な言葉から思考を読み解き、顧客自身もまだ見えていない『あるべき姿』への物語を共に紡ぎ出す能力」だ。顧客が抱える混沌とした悩みに対し、あなたの知識力を駆使して、「貴社はこうするべきです」という未来の地図を描いて見せる力だ。これができれば、あなたは「何かあったときの最初の相談相手」になり、もはや競合を心配する必要はない。こんな「知識力」をベースにすると、従来の営業スタイルは一変する。
(1)儲けようとしてはいけない。「お客様に儲かってもらう」
お客様はあなたの商材を買いたいわけではない。自身の課題を解決したいだけ。自社の利益を棚上げし、お客様が儲かるための「最善」を徹底して追求する。
(2)説得してはいけない。「あるべき姿を語る」
お客様の「あるべき姿」を共有し、そこへの道筋を示す。そうすれば、お客様は自ら動き出し、あなたをパートナーとして選んでくれる。
(3)お願いしてはいけない。「お願いされるようになる」
教師のように、解決の筋道を示すことができれば、「先生、どうすればいいですか?」と、お客様からお願いされる。
営業事務や単純な質疑応答はいずれAIが代替する。しかし、お客様の未来をデザインし、正解のない問いに答えを出せるのは人間だけ。そんな「知識力」を磨き、お客様の良き教師となれば、売り込む必要はなく、案件は向こうからやってきて、数字は結果としてついてくる。
ネットコマース 代表取締役CEO 斎藤昌義

斎藤 昌義(さいとう まさのり)
1958年生まれ。日本IBMで営業を担当した後、コンサルティングサービスのネットコマースを設立して代表取締役に就任。ユーザー企業には適切なITソリューションの選び方を提案し、ITベンダーには効果的な営業手法などをトレーニングするサービスを提供する。