鹿児島市に本社を置くパステムソリューションズは、茶業の管理システムや公立大学向けの業務システムなど特徴的な事業を県内外に広く展開してきた。2026年からは地元の鹿児島銀行傘下に入り、地場企業や自治体のDX支援を加速させている。吉留久隆社長は、同行の広い法人向けネットワークを生かして提案機会を増やし、ビジネスを強化する気構えだ。
(取材・文/下澤 悠)
公立大学向けシステムを全国展開
――事業の概要を。
まず、自治体向けに人事給与や文書管理など行政業務のソリューションを提供している。そして公立大学向けの財務・給与・勤怠・文書管理システムを広く展開しており、全国で45%ほどのシェアを持ち、最も売り上げが大きい事業だ。GIGAスクール構想による小・中・高校へのPC導入などICT基盤事業は、鹿児島県内でおよそ50%のシェアを確保し、こちらも大きな柱になっている。
吉留久隆 代表取締役社長
このほか、漁協向けや茶業界向けの自社開発システムを手掛けている。狭いが特定の業界に深く刺さっており、漁協向けの販売システムは九州などで、茶葉の配合管理ができる茶業管理システムはお茶どころを中心に引き合いがある。
――強みは何か。
一つは、学校や自治体などの公共領域に強いことだ。公立大学向けの事業は、もともと鹿児島大学の財務会計システムに携わっていたことで蓄積したノウハウを生かし、実績や顧客からの評価を積み重ねて営業を全国展開してきた。競合他社もあるが、ソリューションを自社パッケージでそろえているのは当社ぐらいなので、総合力で選ばれているのではないか。
また、県内で盛んな漁業や茶業といったニッチな業界に深く携わることで得た専門知識を生かし、自社開発のソリューションの提供が可能になっている。営業も専門知識を持っており、提案段階からSEを伴わずにお客様と対等に話ができる。
さらに、ソリューションを導入した後にストックにつなげることを約20年前から目指してきた。導入して終わりではなく、保守・運用まで伴走するサポートを展開し、安心して頼ってもらえるように努め、差別化を図っている。2025年のストックビジネスの粗利は、売り上げの40%を超えており、これを50%超に伸ばして経営の安定化を図っていきたい。
地場企業や自治体のDXを推進
――地元企業が抱える課題は何か。
「DXを進めたいが、どうしていいか分からない」という相談が多い。県内は中小企業が多くIT投資の余力が小さいため、いきなりDXを進めることは難しいだろう。当社としては、まず入り口に立つという意味でネットワークやクラウド、セキュリティーといったインフラ整備から進めるよう提案している。いずれは、その先のDXにつなげて展開していきたい。
――26年1月から鹿児島銀行の子会社になったが、どのような役割を担うのか。
地域の企業や自治体のDX実装を担う役割が求められている。同行は顧客企業や自治体の経営課題を把握しているはずなので、われわれも一緒に解決していけると思っている。
当社としては特に、同行のグループが持っているネットワークを生かして顧客との接点が広くなり営業機会が増えると期待している。これまで自社単独では法人向けで少し弱い部分があったため、接点のなかった地域企業への提案機会が増える意義は大きい。既に茶業管理システムは紹介が始まっている。いずれは、中小企業のERP関連領域に参入できる可能性もある。
柔軟な発想を生む環境を整備
――成長するために課題となっていることはあるか。
やはり人材確保が重要で、採用だけではなく社内の環境づくりにも力を入れる必要がある。従来のソリューションという考え方には論理的な思考や正確性が重視されてきたと思うが、今後のAI時代には柔軟な発想力やアート思考などが重要になるのではないか。当社としてはそういった力を持つ人材を育てたい。
具体的には整然と机が並ぶ空間ではなく、特に若手がゆっくりとコミュニケーションを取ることができ、意見が言いやすいようなミーティングスペースを物理的に設けていくつもりだ。地方ではなかなかそういった場所がないと感じており、整備できれば生産性の向上や採用にもつながっていくだろう。
――そのほか、力を入れて取り組んでいることは。
当社が得意な領域が今後枯れてしまった場合に備え、新規事業をつくろうと構想している。また、顧客を抱えている既存市場で優位性を生かした展開も同時に進めたい。信頼を得ているユーザー基盤の中でお客様の困りごとに寄り添いながら対話を重ねて、新たなソリューションをつくっていく。
具体化はこれからだが、クラウドやAIを用いて顧客の業務そのものをBPOでアウトソースしてもらうことを考えている。それによってお客様の成長を支えるパートナーとして、継続的な関係を保ち続けられるのではないか。受託開発がなくなることはないと思うが、「BPO×IT×AI」でこれまでの人月商売から脱却して、サービス提供にかじを切り、さらなるストックビジネスにつなげていきたい。
Company Information
1989年に設立。鹿児島市に本社を置き、宮崎市に拠点を持つ。NECと販売店契約を結んでおり、自治体や公立大学向けの業務システムなどを手掛ける。2026年1月に鹿児島銀行の傘下に入った。26年3月期の売上高は71億円。役員を含む従業員数は84人(26年4月現在)。