札幌市のオルタナティブは小規模な企業のIT活用を支援している。経営課題や現場業務の実態を丁寧に把握した上で、最適な方向性の提示に注力。新聞販売店向けの電話対応ソリューションなど、特定業界の課題に応じた製品化にも取り組む。学生インターンにも力を入れ、IT業界を担う人材基盤の裾野を広げている。
(取材・文/春菜孝明)
小規模企業こそ好機
――事業の概要を。
ITコンサルタントとして中小企業や小規模事業者を中心に支援している。2022年に起業したばかりで、企業の情報システム部門に25年勤務した経験が土台になっており、専門分野を持たず、幅広く案件を手掛けることができる。
谷藤亮子 代表取締役社長
――顧客はどのような課題を抱えているか。
数人から50人程度の企業の場合、DXやAI活用に取り組みたいという意欲はあるが、どこから着手すべきか分からず、相談先も見つけられていないケースが多い。
当社ではIT製品の導入を前提とせず、経営者との壁打ちや業務プロセスの棚卸しを重視している。企業が目指す姿に対して適切な手段としてDXを提案している。
――小規模な企業はどのような業務環境に置かれているか。
紙ベースの業務が依然として残っており、台帳管理が紙のままというケースも珍しくない。業務の属人化や情報の分散も顕著だ。インフラ面でも、数十年前から大きく更新されていない環境が見受けられる。具体的には旧式のNASやVPN機器、古いメールサービスなどだ。基盤が整っていないので、高度なITを運用しようにも、十分な効果が出ない要因となっている。
そのため業務の棚卸しと並行し、インフラやネットワーク、セキュリティー環境を含めた全体の見直しまで行うようにしている。
――中小企業はどのような姿を目指すべきか。
ITは特別な存在ではなく、業務の中に自然に組み込まれている状態が理想だ。そのためには、IT運用を現場任せにせず、経営課題として扱う必要がある。経営層が関与し、全社的に活用できる体制の構築が必要だ。
――規模が小さいほどIT投資が難しい側面もある。
意思決定の早さと変化に対応する力でIT活用の効果を出すことができる。小規模事業者は全社への浸透が早い分、実行力に優れる。
最終的には、ITを前提とした業務運営と継続的な改善が文化として定着しているかが問われる。それが実現できている企業は、環境変化に強く、持続的な成長にもつながるだろう。
新聞販売店の業務効率化
――自社製品の展開について教えてほしい。
新聞販売店向けに「KAMUY(カムイ)」をリリースした。問い合わせ対応の業務をAIでサポートする、無人コンタクトセンターがコンセプトだ。
開発の出発点は、札幌の新聞販売店からIT顧問として相談を受けたことだ。新聞業界は購読者の減少が続き、従来のビジネスモデルだけでは将来の見通しが立ちにくい。販売店としての生存戦略を考えるにあたり、作業時間の削減や新規事業を検討する時間の確保が課題だった。
その中で大きな負担として浮上したのが、早朝の電話対応業務だ。未配達などの問い合わせ対応のため午前5時頃から人員を配置しなければならず、対応が発生しない時間帯でも人件費が発生していた。
コロナ禍ではタクシー会社と連携し電話対応や配達を委託していたが、需要回復により継続が困難となった。そこで人手に依存しない仕組みとしてITでの解決を模索した結果、クラウド技術を活用し、無人化する構想が具体化した。
――具体的な機能は。
KAMUYは電話対応を自動化し、問い合わせ内容に応じて処理する仕組みを持つ。顧客データベースと連携することで、発信者の情報や契約内容を事前に把握。利用者は最小限の操作だけで用件を伝えることができ、対応が完結する。例えば未配達対応であれば、番号入力だけで受付が完結する設計だ。
問い合わせ回数や内容に加え、声のトーンから感情判定を行い、対応優先度に反映する仕組みを備える。これにより、クレーム性の高い案件や緊急性の高い対応を早期に把握できる。さらに、大雪や災害など地域特有の事情に応じた自動応答も設定可能で、運用に合わせて柔軟にカスタマイズできる。
学生インターンに注力
――今後の展開は。
新聞販売店向けの販路を持つ企業との連携や、新聞社への提案も進める。加えて、業界課題に基づいたサービスという特徴を生かした展開も考えている。単なる電話対応にとどまらず、バックオフィス業務の効率化や新規事業を支援する存在へと拡張させたい。
――どのように組織づくりを進めているか。
学生インターンを積極的に採用している。開発業務にも関与させ、実践的な経験を積ませている。
――人材育成の考え方は。
IT人材は必ずしもエンジニアに限定されない。ビジネスへの理解と課題設定能力を持ち、それをデジタルに落とし込める人材が、より重要になっている。文系出身でも十分に対応可能であり、こうした力を軸に、ビジネスと技術を横断して課題解決できる人材を育てたい。
Company Information
本社は札幌市。2022年に事業を開始、25年に法人化した。システム開発のほかに、ITコンサルティングの一環でセミナーや研修などを手掛けている。