ソアーは佐賀県を拠点に、地域企業のデジタル化を支えている。複合機の販売・保守という既存ビジネスを土台に、クラウドやセキュリティーといったDX領域へビジネスを拡大。少子高齢化や都市部への人材流出という地方特有の課題に直面しながらも、顧客と信頼関係を築きながら過去最高益を更新し続ける。
「見せる事務所」で提案加速
──事業の概要を。
1983年に佐賀OA機器として設立し、富士ゼロックス(現富士フイルムビジネスイノベーション)の特約店として複合機を主に販売してきた。しかし、そのままでは価格競争に陥ることを懸念し、90年には現在の社名に改め、メーカーの枠にとらわれずに顧客が求めるものを届けるビジネスも展開し始めた。現在はPCやサーバーなどのハードウェアだけでなく、各種業務システム、クラウドサービス、セキュリティーといったサブスクリプションサービスまで、幅広い商材を取り扱っている。
池田 勝 代表取締役副社長
──現在のビジネス状況と注力領域は。
直近の2025年度決算では、売上高、粗利ともに過去最高を達成した。複合機の台数自体は最盛期と比べ減少しているが、ソリューションビジネスが収益を支えている。
特に伸びているのが、SaaSなどサブスクリプション商材だ。かつては業界全体で一括売り上げの数字を重視する傾向があり、少額の月額課金商品は評価されにくかった。しかし、当社では5~6年前から売上利益とは別枠でサブスク商品の契約獲得を高く評価する仕組みを導入した。この評価制度が浸透し、現在はサブスクビジネスが売り上げの柱の一つとなっている。
サブスクの取り扱いが難しい理由の一つとして、月額や年額、翌日から利用開始など、サービスごとに提供方法が異なり管理が複雑になる点が挙げられる。これらの課題を解決するため、当社ではSFAを徹底的に活用している。1カ月、3カ月、半年、1年と先々の案件をあらかじめ登録し、見込み額を可視化することで合理的な営業スタイルを確立した。加えて、SFA活用の様子を提案時に事例として紹介できるので、SFAの売り上げ増にもつながっている。
──地域企業がDXを進める上での障壁は。
顧客の状況は二極化している。最新技術や業界トレンドの取り込みに積極的な企業もあれば、セキュリティーやバックアップ、BCP(事業継続計画)に全く手をつけていない企業も多い。さらに、地方ではいまだに紙文化が根強く残る現実もある。
こうした企業に新しいソリューションの恩恵を体験してもらうため、数年前にオフィスを全面改修し、フリーアドレスやペーパーレス化などを実現した体験型ショールームに変えた。かつては当社も紙が中心だったが、自ら新しい働き方を実践することで「地方の100人規模の会社でも、あまり費用をかけずここまでできる」という事実を、実感を持って広く伝えることができる。
営業活動や定期セミナーを通じ、オフィスには年間200社以上が訪れる。私たちが顧客企業へ出向くだけでなく、足を運んでいただき、現場で実際の仕組みや導入効果を見てもらうことが信頼関係の構築や商談スピードの向上につながっている。
人口減少で顧客企業の事業所数が減少していることも現実としてある。特に複合機関連事業への影響が顕著で、後継者不足などによる廃業で、複合機の引き上げ依頼が数年前から増加している。
身近な相談役として支援
──人材確保の取り組みは。
佐賀県は福岡県に近く、優秀な若者が都市部へ流出しやすいという地域共通の課題がある。加えて、「過酷な労働環境」という業界の古いイメージを払拭することも急務だ。これに対し当社は、オフィスデザイン刷新による環境改善に加え、若者の価値観を尊重し、自由に意見を言える文化づくりに努めている。
一例として、eスポーツチームへの出資や交流を行っている。私たち自身が10代、20代の感性に触れ学ぶだけでなく、若者に仕事について知ってもらう機会にもなっている。
──今後について。
生成AIなどの先端技術については、当社もまだ模索中だが、まずは自社で既存パッケージを組み合わせて「何ができるか」を試している。高額なシステムではなく、セキュリティーが担保されたエンジンを活用し、業務効率化の実例をつくり、成功事例を「自分たちも実際にこう使っています」と顧客に公開していく方針だ。
提案時に重視するのは、全てをお客様任せにせず、伴走する姿勢だ。地方では顔の見える距離感で、信頼できる相手から技術を導入したいというニーズが強い。建設や土木、医療など地域の主要産業には、従業員のITリテラシーに課題のある企業も多いため、そのような企業には、明日からでも使えるような分かりやすいものをまずは提案している。その後、理解が深まればさらに将来を見据えてどのようなサービスを導入するか、業務をどのように変革するかを一緒に検討する、という活動を続け、地域のDXを進めていきたい。
Company Information
1983年、現在本社のある佐賀市で佐賀OA機器が設立。90年にソアーへ社名変更。佐賀県で唯一、富士フイルムビジネスイノベーションの特約店。ハードウェアとソフトウェアを組み合わせてソリューションを提供。