〈企業概要〉
フィンランドRELEX Solutions(リレックスソリューションズ)は2005年設立。サプライチェーン管理(SCM)システムの中でも小売りに関する計画ソリューションを提供する。グローバルで約700社が導入している。日本法人は26年1月に設立。
小売業向けの需給・在庫計画SaaSを展開するフィンランドRELEX Solutions(リレックスソリューションズ)が、国内展開を本格化させている。長年の技術開発で培ったAIによる需要予測をもとに、在庫をコントロールできる統合基盤を提供。パートナーとの伴走を推進力にマーケットリーダーを目指す。
(取材・文/春菜孝明)
業務全体を最適化
小売店では販売動向を見極め、発注の数量やタイミングを判断する精度が収益を大きく左右する。こうした領域に特化したSaaSを提供するのがリレックスソリューションズだ。▽需要予測▽在庫・補充計画▽店舗レイアウト・棚割計画▽価格と販促の最適化―と、小売りの上流から下流までカバー。予測や計画はプラットフォーム上で連携され、需要予測に基づく補充計画などの全体最適化を図ることができる。
福沢勇貴 カントリーマネージャー
グローバルで700社の導入実績がある同社は日本の小売業の現状について、品揃えを維持するためにサプライチェーンが非効率になっていると指摘する。欠品の少なさは高い水準にある一方で、過剰在庫になったり、物流や店舗業務の負担が大きくなったりしやすい。この課題に対して同社は、人手不足が進む中でも売り場水準を落とさずに効率化できる仕組みを提供するとしている。
創業時からのコア領域は需要予測と在庫・補充計画だ。強みは「シナリオへの対応力」にあると、福沢勇貴・日本カントリーマネージャーは解説する。例えば欠品を出さないための在庫数やメーカーによって異なる発注ロット、輸送量が限られる中での配送順など、互いに影響し合う複雑な要素を材料に、パラメーターによる設定で一連の計画を最適化。店舗のバックヤードだけでなく物流拠点も計画に組み込める仕組みになっている。
小売業向けを掲げる他社のソリューションは、導入後に追加開発や個別のつくり込みが必要となるケースがあったり、ユーザー側の手作業に委ねられる場合も多いと福沢カントリーマネージャーは指摘。ベストプラクティスを踏まえた機能実装が差別化要因だと強調する。
業界特化の強みを支えるのが、膨大なトランザクションを高速で分析するインメモリーデータベースだ。分析基盤は独自に開発しており、多店舗における大量品目の即日発注をサポートしている。
創業当初から機械学習を前提に設計。例えば、曜日や天候といった要素を同時に考慮したり、全店舗のデータを横断活用して精度を高めたりと、複数の要因を組み合わせて経済合理性の高い予測を実現しているという。近年はAI機能として意思決定を支援する存在へと進化している。
店舗多いほど効果増大
2025年に日本市場での活動を本格化させており、「3年以内にARR(年間経常収益)20~30億円」(福沢カントリーマネージャー)を目指している。ドラッグストア大手のコスモス薬品やディスカウントストア「ダイソー」を運営する大創産業の導入事例が試金石となる。
店舗数が多いほど最適化の余地があるため、チェーン展開するエンタープライズのほうが投資対効果を得やすい。ただ、グローバルでは数十店舗程度の比較的小さい企業でも実績があるという。統合型ソリューションではあるが、実際には需要予測のみなど、一部機能から使い始めるケースも多数で、利用機能に応じた価格体系となっている。
案件はアイルランドAccenture(アクセンチュア)、リヴァンプ、JDSC、フォーティエンスコンサルティングといったコンサルティングパートナーと伴走して取り組んでいる。リレックスソリューションズはプロジェクトの進め方やドキュメントのひな形などグローバルの実績を取り入れたかたちでリード。パートナーには商慣習のすり合わせやニーズのくみ取りの役割を期待しつつ、ナレッジを徐々に移転している。
現状の販売形態は直販で、パートナーはプロジェクト推進を担うことで収益を得ている。ただ、福沢カントリーマネージャーは国内の取引慣行に合わせ、ライセンスの代理販売などの可能性を探りたいと意欲を示す。
「当社の製品は人間で言えば脳で、手足となるシステムが必要」(福沢カントリーマネージャー)と表現するように、実装フェーズではPOSシステムなどとのインテグレーションが欠かせない。また、店内のカメラから在庫や棚割りの状況を確認、システムに反映する仕組みがグローバルで生まれている。国内でも、画像認識やセンサーの技術を持つリテールテックのISVベンダーと連携する余地がある。
日本法人はユーザー数とともに段階的に拡大する計画で、営業やプリセールスに重点を置く。カスタマーサクセスに加え、技術的に支援する「Continuous Delivery(継続的デリバリー)」の部隊も編成。導入支援体制を充実させる。