QTnetは福岡市を拠点に電気通信事業を展開し、BtoB事業では、ネットワークやセキュリティー、クラウドのほか、AI関連ソリューションといったサービスを広く提供している。執行役員の安川寛昭・ビジネス営業本部長は、新しい技術や事業にも積極的に取り組み、ビジネス強化を進める構えだ。
(取材・文/下澤 悠)
AI基盤サービスを提供
――展開しているBtoB事業の概要は。
もともとは、設立時から企業や自治体向けにネットワークサービスを提供し、拠点間ネットワーク通信を担ってきた。時代の変遷でインターネットへつなぐサービスへと拡大し、必要なサーバーやネットワーク機器を提供している。現在は、データセンター(DC)事業やセキュリティー、AI関連サービスに加えて、通信事業からは少し離れるがデジタル広告業も手掛けている。
安川寛昭 執行役員ビジネス営業本部長
顧客は九州が中心だが、東京などでもセキュリティーやクラウド、AIなどのサービスを展開している。例えば、東京や大阪に集まりがちなDCに関して、災害などの非常時に備え、九州に分散させることをお客様に提案している。
――AI基盤提供の狙いは。
企業向けのネットワークやクラウドなどを提供している中で、やはりAI関連のサービスが今後必要になるとみて、基盤となる「QT-GenAI」の提供を始めた。企業内の情報を外部に出さないような仕組みになっており、安心して使えるのが特徴だ。プラットフォーム上で「ChatGPT」や「Gemini」「Claude」などの最新モデルを利用でき、テキストだけでなく画像や音声も含めて投げ込まれた情報を複合的に処理し、整理してくれる。既に福岡県や福岡市、北九州市、金融機関では大分銀行などで導入されている。
今後はAIが単体で使われるのではなく、業務の流れに組み込まれ、人が介在せずにAIエージェントに仕事を任せるようになるだろう。当社もそのように社会実装を推進していきたい。
自社のプロeスポーツチームも
――強みは何か。
一つはきちんと技術者がそろっており、ネットワーク基盤構築のほかセキュリティーなども含めてトータルでサービス提供できるという手堅さだ。運用面でも、九州中に張り巡らせている設備を24時間356日監視するオペレーションセンターを持ち、お客様に困りごとがあった際に全て対応できる点も強みだ。
また変化の多い業界ということもあり、新しいものを柔軟に取り入れている点も強みだと思う。一例としては、自社でプロeスポーツチーム「QT DIG∞(キューティーディグ)」を運営している。日本でeスポーツが浸透していけば、高速で低遅延の回線などがより求められるようになる。プロチームを持つことは、長期的な目線でビジネスにつながるだろうとの狙いもある。
通信系のサービス開発とは別に、将来の新規事業を考えることにも力を入れている。AI基盤のように今後伸びる事業の芽を育ててきた。eスポーツなどはまだ少し距離があるものの、成長すれば通信事業の領域に近づき、当社のビジネスの拡大に寄与する可能性がある。
――SIerとの協業については。
最近では、インターネットイニシアティブなどと九州で地域分散型DCの実証を進めたり、GMOインターネットやNTT東日本、NTT西日本と分散型AIインフラに関して技術実証をしたりと、協業して取り組んだ実績がある。また、データ主権の観点からソブリンクラウドというニーズに対応できるよう、日鉄ソリューションズの「Oracle Alloy」を活用したマネージド・クラウドサービス「absonne」の九州での販売・運用を担う見通しだ。
協業については何か方針があるわけではなく、われわれとしてはフラットな姿勢でいる。変化が激しい業界であるので、その時に応じて最適なプロジェクトを、最適なパートナーと組んで進めることがかぎになるはずだ。
新しい挑戦ができる環境を整備
――人材確保のために取り組んでいることは。
当社は地元で働きたいという従業員が多く、九州出身者や九州内の大学卒業生が9割以上を占め、離職率は低い。採用においては、インターンシップを積極的に行うなどして、魅力を知ってもらうことに注力している。
入社後も、社員が新しいことに挑戦できる環境を整えている。社内公募を行ったり、また自身の業務の10%はほかの部署の仕事にチャレンジできる「10%ルール」という社内副業のような制度を設けたりしている。
――将来的な事業の構想は。
今後もAIとセキュリティーなどが軸になるだろうが、通信業界の変化は5年先でも読みにくい。それでも、変化を先取りしていち早く手を打っていくことに尽きるため、さまざまな実証を重ねるなどしている。
当社は通信事業者として、従来はインフラをつくり、その上に基盤を構築する「下から上へ」という流れで事業を展開してきた。今後の構想としては、まずアプリケーションやシステム、AIエージェントの導入などを軸に展開し、その後に土台部分へと進んでいく「上から下へ」というアプローチで事業を推進できるようにしたい。
Company Information
1987年に創立。九州電力グループで、電気通信事業などを手掛ける。福岡市に本社を
構え、九州各県と東京都にも拠点を持つ。2026年3月期の売上高は約760億円、従業員数は1144人(26年4月1日現在)。