長野県情報サービス振興協会(NISA)は、県内のIT産業の発展を目的に、四つの支部と各種委員会が中心となり活動している。会員企業同士の交流や産学官連携、人材育成を通じて、地域に根差したIT産業の基盤づくりを進めている。原勝敏・専務理事に、活動内容や今後の展望を聞いた。(大向琴音)
県内に四つの支部を設置
――NISAの概要をお願いします。
当協会は1985年に設立されました。現在の会員数は、正会員64社、賛助会員5社、合わせて69社です。長野県は広域のため、北信、東信、中信、南信の四つの支部に分かれています。地域ごとに集まりやすく、会員企業の要望にも対応しやすい体制となっています。
設立当時はソフトウェア産業が成長していた時期で、県内でもコンピューター活用が広がっていました。そうした中で、会員企業同士が情報共有をしながら、技術力向上や人材育成、企業間連携に取り組むことを目的に発足しました。
原勝敏・専務理事
リアルな交流の場を重視
――会員企業にとってどのようなメリットを提供していますか。
リアルな交流の場を重視しています。各企業の経営者だけでなく社員も参加し、グループワークや懇親会を通じて他社の取り組みを知る機会をつくっています。会員企業同士が互いの強みを共有することで、新たなサービスや事業創出につながることもあります。
また、委員会ごとにさまざまな取り組みを行っています。例えば、技術開発委員会では、会員向けに新たな技術を広めることを目的に活動、「新技術活用研究事業」としてIT企業のトレンドとなる新技術を習得・理解するための講演会を開催しています。2026年度は長野県工業技術総合センターと連携し、「IOWN」構想などのテーマで講演会をします。
――そのほかにはどのような活動をしていますか。
事業開発委員会では産官学連携を進めています。例えば、信州大学が中心となる「信州DX推進コンソーシアム」に参加し、情報共有や情報発信をしています。信州DX推進コンソーシアムは22年7月に、国・地方公共団体や企業、教育機関などが一体となってDXを推進するための組織として設立されました。長野県は、IT業界に限らず、学校と企業の連携が盛んな地域のため、比較的連携がしやすい体制ができていると感じます。
最近では、清泉大学の学生や地域の高校生と、会員企業の若手が参加する交流イベント「産学AIイノベーション・Meet UP」を開催しました。生成AIを活用して地域課題の解決策を探しながら、交流を深めるワークショップで、長野県や長野県教育委員会が後援しています。
人材開発委員会では、「NISA学園」を実施しています。情報処理技術者の能力開発・育成を目的として、会員だけでなく県内の企業・団体にも研修コースを開放する取り組みで、毎年70~100人程度が受講しています。プロジェクトマネージャー(PM)育成やDX人材育成の講座を開催しており、PM育成講座については10年以上継続しています。社員教育の一環として活用する会員企業もいます。
――長野県のIT産業における課題をどう見ていますか。
課題の一つが人材確保です。近年は、IT企業以外でもIT人材の採用が加速しており、IT業界で人材を確保することが以前より難しくなっています。そのため、県内でより多くのIT人材を育成する必要があります。また、人材が流出し、県外にとどまってしまうケースも多いです。いかに魅力のある仕事をつくれるかどうかが、長野県に戻ってきて活躍してもらうための大きなテーマだと思います。
加えて、仕事の確保も課題です。県内のIT企業が都心部などの県外から仕事を受注する、もしくは地元企業がITの仕事を県外に発注しているケースもあります。そのため、人材と仕事を県内に集約させることが重要だと感じます。
地元企業の伴走支援へ転換
――今後の展望を教えてください。
今後は、これまでの受託開発中心の事業を展開してきた県内のIT企業が、地元企業への伴走支援型へと転換していくことが大きな方向性になると考えています。長野県には中小企業が多くありますから、案件一つあたりの金額としてはそれほど大きくありません。そのため、地元企業の伴走支援を行う一方で、県外からの受託業務とのバランスを取っていくことが必要になるでしょう。
また、会員数をさらに増やしたいと考えています。まだ県内には多くのIT企業があります。情報交換や連携の輪を1社でも多く広げることで、長野県、さらには日本全体のIT産業の活性化につなげていきたいです。
<紹介>
【長野県情報サービス振興協会】
1985年に設立。県内IT産業の健全な発展を図るとともに、産業のIT化を推進し、地域社会の活性化に寄与することを活動目的とする。98年の長野オリンピック・パラリンピックではITボランティアとして運営を支援した。会員は合計69社。