栃木県情報サービス産業協会(TISA)は、さまざまな取り組みを通じて県内のIT産業の発展を目指している。注力する人材育成においては、独自の認定制度と研修を提供するなど充実した支援を実施する。情報発信への注力によって、会員企業が増加しており、協会の動きは活性化している。2026年5月に会長に就任した武田文夫氏に話を聞いた。(岩田晃久)
独自の認定制度を展開
――どのような活動をされていますか。
当協会は1991年に活動を開始し、95年に法人を設立しました。栃木県内のIT企業が中心となり活動をしています。
現在注力しているのが人材育成です。人材育成委員会には産学連携G(グループ)と企業人材Gがあり、前者は学生の育成を目的に、大学と連携して授業をしたり、プログラミング教育の支援をしたりしています。後者は会員企業だけにとどまらず、県内のITベンダー全体の人材育成に取り組んでいます。
この中で、栃木県から業務委託を受けて、地域DX人材の育成を目的とした「Tisa DX Advisor(TDA)」という認定制度を設けています。1年をかけてさまざまな講習を受講し、テストを受け、結果が良ければTDAに認定されます。TDA認定者は、地域の企業のDX推進をサポートするといった活動をします。TDAの研修の受講費は1万円ですが、同じような内容の研修を普通に受けようとすると高額な費用が発生することもあり、受講につながっています。この制度をきっかけに入会につながったケースもあります。
このほかには、ビジネス委員会が講習会の開催や、会員の中でのビジネスマッチングなどを、総務広報委員会は、情報発信や会員の懇親を深める施策に取り組んでいます。
武田文夫会長
積極的な情報発信で会員獲得
――会員獲得における施策を教えてください。
現在の会員数は52社で、近年は増加傾向にあります。ユーザー企業もDX推進やAI活用に取り組んでいますので、今後は、IT企業だけではなくユーザー企業が会員になってほしいという考えがあります。
会員獲得に向けては、Webを通じての情報発信に力を入れています。数年前にWebサイトをリニューアルし、会員の活動を紹介するなどTISAの内部が活性化している点をアピールするようにしていますし、SNSを利用する人も多いので、専任担当者を設けています。
今は委員会の主力が30~40代のメンバーに切り替わってきており、今後はより活性化していくことが期待できます。私の任期は2年間ですので、体制をしっかり構築して、若手につなげていくことが目標です。
IT業界が最新テクノロジーを使い変わる
――県内のIT市場をどう捉えていますか。
宇都宮市では、若い人が中心となって、さまざまな活動に積極的に取り組んでいますし、鹿沼市や那須塩原市といった他の自治体でもしっかりとITを活用している印象を受けています。
民間企業においては、私個人の印象になりますが、積極的にITに投資する企業と、そうではない企業が二極化しているような感覚です。これからの企業活動では、AIの活用が必須であり、多くの企業がITの専門家と一緒になってAIを活用する環境をつくっていくのが大事になりますし、TISAの役割も大きくなると思います。
宇都宮市は「宇都宮ベンチャーズ」という起業家支援施設を運営し、また、25年11月には、起業家や企業内リーダーの育成・支援を目的とした団体「栃木イノベーションベース」が発足しました。そのほかにもイノベーターズ・プラットフォーム協会と県内の企業や自治体が協力して、15~29歳の若者が、デジタル技術を使って地域課題の解決と新しいビジネスの創出に挑むプログラム「Houga(萌芽)プログラム」を展開し、プロダクト開発から実証まで伴走支援しています。こうした動きから、県内では起業を支援する環境が整いつつあります。
――全国的にIT人材不足が課題となっています。
県内の学校を卒業しても、東京で就職するケースが多いのが実情です。栃木県にも魅力的な企業がたくさんあることを学生たちにアピールして、県内で就職するという流れをTISAが中心となってつくっていきたいと思っています。
――今後の展望をお願いします。
お客様を変えていくには、まずはわれわれIT業界の人間が変わる必要があります。新しい情報をキャッチアップし、新しいテクノロジーをきちんと使ってやり方をアップデートする。その取り組みがユーザー企業をはじめ外に情報として届いていく、そうした動きをつくるのが大事だと感じています。
<紹介>
【栃木県情報サービス産業協会】
1991年に栃木県産業支援ソフト業協会として設立、1995年に栃木県情報サービス産業協会となり社団法人に。人材育成、調査研究などを通じて、会員を支援、IT産業の発展を目指す。