旅の蜃気楼

日露戦争の戦跡を訪ねて

2011/10/06 19:47

週刊BCN 2011年10月03日vol.1401掲載

【旅順発】旅順口(港)は美しい。両のかいなで海を抱え込んで入江を作ったように見える。入江の中には“虎の尻尾”と呼ばれる中洲ができていて、人工ではないかと思うほど絶妙の美しさだ。

▼当日、中国人民解放軍の軍艦が停泊していた。旅順口旅順口は黄海と渤海を見張るのに最良の軍港で、今も現役だ。白玉山にはこの地での戦を指揮した乃木希典が建立した展望塔がある。旅順口を案内してくれた20代半ばの女性ガイドによると、「この塔のある白玉山の日本人への公開は今年からで、塔は納骨堂も兼ねていた」そうだ。1904年、大日本帝国とロシア帝国は旅順を巡って死闘を繰り広げた。これが日露戦争だ。

▼白玉山に立って左斜め前方に爾霊山が見える。この山には雲が多い。「だから“坂の上の雲”と呼ばれている」とガイド。秋山好古・真之兄弟と正岡子規の人間模様を描いた小説の題になっている。爾霊山は「にれいさん」と読む。中国語で読めば、「アール リン サン」となる。どちらで読んでも、この山が203mの高さであることを示している。「もともとは206mの高さがあったが、戦で203mになったと」とガイドは繰り返し説明した。ここを二〇三高地ともいう。最も激しい戦いが繰り広げられた場所だ。

▼ガイドはいろいろなことを説明してくれた。この地は史跡として「愛国教育のために中国政府が保存した」。訪問するのは日本人が多いが、ロシア人も中国人も来る。ガイドに質問をした。「国が違うと、説明も変わるのか」。答えは、「それぞれの立場での説明をする」というものだった。中国人に対しての説明は「戦の下働きは旅順の人々がした。ロシアの支配は10年、日本の支配は40年。この国の恥を忘れてはいけない」と。爾霊山の帰り道の脇に立つ看板を見ると、まさに「国の恥を忘れるな」とある。次週はこの続きを書く。(BCN社長・奥田喜久男)

白玉山の展望台から旅順口を望む。湾の中央にある中洲は「虎の尻尾」の名がある
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