店頭流通

ニーズ多様化する外付けHDD

2009/12/17 16:51

週刊BCN 2009年12月14日vol.1313掲載

 外付けHDDの大容量化が顕著になっている。外付けHDD全体で1TB以上のモデルが占める販売台数の割合は2009年11月時点で50.4%、ついに過半数を超えた。写真や動画、音楽などコンテンツを保存する機会が増え、外付けHDDのユーザー層は拡大してきている。こうしたなか、メーカーは高速なデータ転送が可能な新規格「USB3.0」をはじめとした付加価値をアピールするほか、最新OS「Windows 7」に対応するなど、容量以外のメリットをユーザーに強く訴求することで多様化するニーズに応える。

ビックカメラ新宿西口店の外付けHDDコーナー

「お買い得感」を示す量販店

 ビックカメラ新宿西口店では、4階のエスカレーター正面に据置型の外付けHDDのコーナーを設置する。POPには「電源」「保証期間」など製品のチェックポイントを一覧で示し、ユーザーが選びやすいよう工夫している。同店を訪れる客層は初心者が多く、「長い目でみたお買い得感」(澤田光昭・周辺機器コーナー主任)を伝えるため、容量別の目安一覧には1GBあたりの価格も表示する。

 据置型のほか、ポータブル型やネットワーク接続対応など、形状や機能に分けて製品を配置。用途に応じた機種を選択しやすい売り場づくりを心がける。デジタル家電とつなげるモデルを紹介するコーナーでは、東芝の液晶テレビ「REGZA」とデモ機をつないで利用シーンを提示する。形状別では、据置型とポータブル型のいずれも同程度の割合で売れているそうだ。今後、容量では「1.5TBモデルが売れる」と予測する。

ユーザー個々の要望に応える

 外付けHDDを買い求めるユーザーのニーズは多様化している。メーカーシェア首位のバッファローは、こうした要望に一つひとつ応える形で製品のラインアップを拡充する。PCコンポーネント事業部STマーケティンググループの中村智仁氏は「ユーザーのニーズを具現化する」ことが要だと強調する。

 同社では数年前から「付加価値戦略」を掲げ、現在は「デザイン」「Windows 7」「USB3.0」の3点に注力している。

 「デザイン」面では、光沢のあるボディにカラーバリエーションを揃えた「HD−PEU2シリーズ」を投入した点。「Windows 7」については、同OSを搭載するPCが発売される前の9月から32bit、64bit両対応のモデルを投入し、処理速度について明るくない初心者でもPCと接続してすぐに使えるよう配慮。また、「USB3.0」は、世界で初めて対応した製品として「最新のテクノロジーをいち早く提供」することに成功した。

 BCNランキングで外付けHDD市場全体の動向をみると、09年は販売金額で前年割れしているものの、台数では前年比でおよそ15%程度上回る勢いを維持している。この理由の一つには、ネットブックの普及がある。ネットブックが記憶媒体として搭載するHDDは、スタンダードタイプのノートPCのそれと比べると容量が小さい。外付けHDDを別途つなぐことで、写真や動画、音楽を大量に保存することができ、使いやすさが向上するというわけだ。とくにバッファローでは、「ポータブル型で500GBモデルを出したことは大きい」と手応えを感じている。


 PC周辺機器メーカーならではの取り組みとして「事業部の枠を越えたコラボレーションによる相乗効果」もシェアの伸びを後押しした。事業部をまたいで情報交換することで、外付けHDDだけでなく、DVDドライブ、無線LANなどの製品ジャンルの垣根をなくして、ユーザーに同社ブランドとして一貫して訴求する。こうした社内の協力体制も、同社が外付けHDDのメーカーシェアで常に上位にいる理由の一つだろう。

Windows 7で市場拡大に期待

 一方、メーカーシェア2位のアイ・オー・データ機器は、「Windows 7」に大きな期待を寄せている。第1開発本部市場開拓部ストレージ開発課課長の本郷道敏氏は、「PCが伸び悩んでいた時期でもHDDは成長した」と、今後の外付けHDD市場拡大の可能性を示唆する。

 同社の売れ筋モデルはシンプルなデザインの「HDCR−Uシリーズ」。「これまではエントリーモデルを中心とした一つの製品でユーザーのニーズを満たそうとしていた」が、現在では個別の用途に的確に応えていくため、ラインアップを細分化している。例えば、東芝の液晶テレビ「REGZA」やレコーダー「VARDIA」などのデジタル家電と接続できるモデルがそれだ。

 PC周辺機器とは別にデジタル家電専用のパンフレットを作成し、家電量販店の各コーナーに置くことで同モデルの認知度向上を図る。また、USB3.0に対応する「HDJ−UTシリーズ」を12月に発売。PC上級者が好むような「とんがった製品」もあわせて提供する。

 通常の外付けHDD以外に同社が扱う製品として、カセットタイプのHDD「iVDR」がある。07年4月に日立製作所の薄型テレビ「Wooo」が採用したことで注目を集めた規格だ。09年は日立マクセルや三洋電機が専用のレコーダーを相次いで発売したほか、10月には国際標準規格として正式に認定を受け、市場はにわかに活気づいてきた。アイ・オー・データ機器では、従来の320GBよりも容量を拡大した500GBモデルを12月に追加発売する。

 第1開発本部ネットワーク&ストレージ開発部ネットワーク&ストレージ開発課企画担当シニアリーダーの北村泰紀氏は「つなぐ先を増やす」ことが普及のカギととらえ、2010年春にはiVDR専用アダプタを投入する予定。アダプタを使えば、テレビでしか視聴できなかったiVDRの録画番組がPCでも楽しめるようになる。テレビとPC双方のユーザーをうまく取り込むことで「使う動機」を創出し、iVDRの販売拡大に結び付けたい考えだ。
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