2010年のデジタルイメージング事業のテーマに、「The Power of Imaging」を掲げたソニー。コンパクトデジタルカメラ「CyberShot（サイバーショット）」ではフルハイビジョン（フルHD）動画を目玉に据え、デジタル一眼レフカメラ「α（アルファ）」では新モデルを投入。さらに、ミラーレス一眼と呼ばれるレンズ交換式の小型デジタルカメラの開発と年内発売を表明するなど、矢継ぎ早の製品戦略を打ち出し、市場攻略とシェア拡大に向けて攻勢をかけている。

フルHD動画とレンズ交換式で攻略
付加価値で単価下落に歯止め

Q　2010年度のデジタルカメラ事業の展開は？

　「コンパクトは880万台の出荷を見込んでおり、うち80％が買い替え・買い増し需要とみている。当社は、新しいデジカメの楽しみ方を提供することで、この需要を取り込む。キーワードは『フルHD』。写真だけでなく、高画質の動画を撮ることができる点をアピールする。10年度内には、当社のコンパクトデジカメのうち、50％以上がフルHD対応になる。同時に、カメラを縦や横にひと振りするだけでパノラマ画像が撮影できる『スイングパノラマ』など、新しい機能を提案していく。一方、デジタル一眼は、需要があるエントリーモデル『α550』を中心に販売する。『α』ではエントリー・中級機の新モデルを開発しており、ラインアップの拡充を図っていく。10年度はこれらの施策で、コンパクトで20％、一眼で10％以上の国内シェアを獲得したい」


Q　店頭での販売戦略は？

　「コンパクトは、2月からPOPなどでフルHD撮影機能を徹底的にアピールする形に変えた。大規模店舗では、実際にデジカメで撮ったフルHDの映像を店頭で流し、その良さを来店者にアピールしている。消費者のなかには、『コンパクトの動画は画質がよくない』と思っている人が少なくない。店頭での取り組みを通じてそのイメージを払拭し、動画を撮る楽しさを伝えていきたい。『α』については、販売の主力となる『550』に搭載した明暗差が大きいシーンでもきれいに撮影できる『オートHDR』などの機能が、店を訪れるお客様に分かっていただきやすい展示・売り場づくりをしていく」

Q　価格下落が激しい市場で、どのように単価アップを図っていくのか？

　「とくにコンパクトの価格下落が激しいが、新しい付加価値であるフルHD動画が歯止めになると思っている。また、ユーザーに対して、撮影した後に写真を見たり保存したりする『アフターシューティング』を提案していくことが重要だと考えている。具体的には、カメラを液晶テレビに接続して、大画面で撮った写真を楽しむことを提案。デジカメの動画をBD（ブルーレイディスク）に残す、画像をPCに保存するといった提案だ。カメラ単体ではなく、ほかの機器と連携したソリューションとして販売することが利益につながる。写真を『撮る』『見る』『残す』という機器の提案ができるメーカーは限られている。当社はその1社であり、トータルソリューションできる点が強みだ」

Q　「ミラーレス一眼」の年内発売を発表したが…。

　「コンパクトから一眼レフに買い替えを検討している人は少なくない。しかし、『重い』『大きい』『操作が難しい』などの理由で、購入をためらう人が多い。当社が開発しているレンズ交換式デジタルカメラは、そうした人たちのニーズを汲み取った製品。他社の製品よりも小型・軽量で、一眼レフ並みの画質とフルHDの動画撮影が特徴だ。カバンの中に入れて持ち歩き、高画質の写真を手軽に撮ることができる。われわれは、このカテゴリは成長の余地が大きいと思っている。ソニーらしいカメラでコンパクトから一眼にステップアップを考えているユーザーを獲得し、市場をけん引していきたい」