ここ数年、情報サービス業界ではネット系サービス会社の躍進が目立つ一方で、受託系は売上高は伸びても利益が減るという状況が続いている。株式公開企業など主要218社の2005年上半期単独業績(1月16日号既報)でも、同様の傾向が表れている。経済産業省が1月11日に発表した特定サービス産業動態統計<情報サービス業>05年11月分と、主要200社の上半期業績ランキング(8─9面、ランキングベスト100社掲載)を重ね合わせると、何が見えてくるだろうか。ITサービス業の06年の動きを読んでみる。(佃均(ジャーナリスト)●取材/文)
動態統計と上期決算数値から 開発系SIerは立て直しに着手
ネット系中心に業界地図に変化
・05年度上期決算の上位200社分析(上)
・05年度上期決算の上位200社分析(下)■売上高の伸びに減速感 外注費の増加が収益圧迫 特定サービス産業動態統計<情報サービス業>05年11月分によると、情報サービス産業の売上高は前年同月比2.1%増の6327億200万円、04年12月から12か月間の累計は2.0%増の9兆7572億100万円だった。
調査対象事業所数は03年12月-04年11月が2785、04年12月-05年11月が1.2%増の2817なので、事業所数ベースで補正した売上高の伸びは1.7%増となる。
11月の業務別売上高は主力の「受注ソフトウェア」が前年同月比9.9%増の3234億8500万円、直近12か月の累計は3.2%増の5兆7983億4200万円だった。1、4、6月に前年同月比マイナスになったことが、全体の伸びに影響した。「システム等管理運営受託」は直近12か月を通じて好調に推移している。
また昨年11月の「ソフトウェアプロダクト」は前年同月比16.1%減、「データベースサービス」は同2.0%減となっており、この2業務を除くとおおむね拡大基調が続いている。しかし前12か月の累計売上高伸び率が6.5%だったのに対し、今12か月は2.0%と4.5ポイントのダウンとなっており、減速感は否めない。
1社当たりの数値で、直近12か月と前12か月を比較すると、売上高は0.9%増、常用雇用者は0.2%増だが、他社からの派遣受入数が13.2%増となっており、1社当たり就労者数は114.0人から115.4人に増えている。外注費の増加が収益を圧迫していると想定され、今年はオフショアないし外国人技術者の採用が強まると予想される。
■SI方式の受注に慎重な姿勢 不採算案件多発で及び腰に 直近12か月で見ると、受注ソフトウェアのうち「SI」が1、3、4、6月に前年同月比を下回った。累計でも1.6%増にとどまっている。
前12か月には一度も前年同月実績を下回ったことがなく、累計で7.7%増と高水準にあったことを考えると、SI契約による案件受注が一転して低迷したのか、あるいは情報サービス企業がSIの受注に消極的だったことが分かる。
SI契約による受注にブレーキがかかった要因としては、(1)地方公共団体の合併に伴うシステム構築案件が一段落したこと、(2)Y2K(西暦2000年)問題をクリアしたシステムがリプレース期に入り、新規システム案件が減少したことなどが考えられる。
もう一つの見方として、02年度、03年度に受注したSI案件に不採算プロジェクトが多発したことから、開発系SIerが受注獲得に慎重になって受注見送り、ないし契約形態を変更したという事情もありそうだ。
また「ソフトウェアプロダクト」が12か月を通して7.7%減となった要因としては、ソフトウェア製品の価格低下を基調にしつつ、ERPやSCM、CRMなど「新アプリケーション」系プロダクトの需要が一巡したこと、およびネットワーク配信サービスへの需要シフトなどが考えられる。
情報サービス業にとって今年の焦点は、(1)システム開発コストの低減圧力、(2)内部人件費ないし売上原価の圧縮・削減、(3)人員配置ないし外注(協力会社)政策、(4)生産性ないしサービス付加価値、(5)主力バトルフィールドの設定--等々ということになる。また経営全般ではアライアンスやM&A、投資などにかかわる意思決定が問われることになりそうだ。
■伸び率20%以上は48社 51位以下で激しい「入れ替え戦」 ここで、開発系、ソフト販売系、システム販売系のSIerおよび、ネット・サービス系、ゲーム/コンテンツ系を含めたITサービス企業218社(昨年6月-9月末日に05年上期決算をまとめた企業)について、連結・非連結混在で売上高ベースのランキング表をみてみよう。(
8-9面参照、資料作成:有限中間法人IT記者会)。
このうち上位100社を、1-50位、51位-100位に分けて、企業の動きを分析すると、株式を公開している開発系SIerが体制立直しに着手し、それをわき目にネット・サービス系企業がランクを上げている。業界地図が着実に変わり始めた。
ITサービス業218社の連結・非連結混在売上高は4兆5158億3300万円(04年上期業績未公表を除く208社の補正値は3.5%増の4兆4657億9200万円)、営業利益は2758億2700万円(同8.8%増の2700億5500万円)、経常利益は2699億3300万円(同11.5%増の2640億1300万円)となっている。うち上位100社の売上高は4兆912億200万円で、全体の90.3%を占めている。
売上高伸び率が20%以上だったのは48社で、売上高ランキング101位以下の企業が33社(68.8%)を占めた。トップはメッツ(579.6%増:売上高195位)、第2位はデジタルデザイン(241.9%増:売上高189位)、第3位はオープンインターフェース(186.0%増:売上高151位)だった。業態別に見ると、ソフト販売系とネット・サービス系が各7社、ゲーム/コンテンツ系が4社となっている。
上位50社を経営特性別に見ると、「開発系SIer」が33社、「システム販売系」が7社、「ネット・サービス系」が4社、「ゲーム/コンテンツ系」と「ソフト販売系」が各3社だった。株式公開状況は1部が35社、2部が4社、マザースが1社、非上場10社となっている。
売上高合計は3兆4968億1900万円(補正値は2.1%増の3兆4771億9700万円)、営業利益は2245億1500万円(同7.6%増の2220億1500万円、営業利益率は6.38%)、経常利益は2142億3900万円(同10.0%増の2117億600万円、経常利益率6.09%)だった。
半期で売上高が1000億円を超えたのは11社、500億円を超えたのは13社だった。
トップは04年上期ランキングに引き続いてNTTデータだった。第2位の大塚商会は初めて上半期で売上高2000億円を突破、営業利益は第4位で、並み居る大手開発系SIerを抑えて総合第2位にランクされている。