双日グループのネットワークインテグレータ(NIer)である日商エレクトロニクス(日商エレ、瓦谷晋一社長)が、このほどデータセンター(DC)事業に参入した。同社は自社のDCを保有して、独自サービスの事業強化を図るほか、双日グループのDC戦略において中心的な役割を果たすプレーヤーとなる。今後、さくらインターネットなどグループ企業と密に連携して、DCの展開を全国に拡大する。
日商エレは今年9月末に、大阪の堂島地区に都市型DCを開設した。開設に伴い、ハウジングや遠隔データ保管などDCサービスと、ICT(情報通信技術)基盤の構築や移設といったインテグレーションサービスの提供を開始。主要ターゲットは、従業員数1000人以上の大手企業が対象となる「エンタープライズ」。日商エレは堂島をDC事業の第一弾として、今後、北海道、首都圏、中部と、順次DCを全国展開する計画だ。
これまで自社でDCを運営してこなかった日商エレがDC事業に参入した狙いは、二つある。第一に、同社は従来型インテグレーションから独自サービスの提供へと事業の舵を切っており、サービス展開のために、自社DCを不可欠の基礎インフラとしている。これは、日商エレ単体としての狙いだ。第二には、さらに、双日グループとしての目論見もある。双日グループは、東日本大震災によるDC分散の需要拡大を受けて、さくらインターネットや双日システムズなど、グループ会社各社が保有するDCを連動させて、分散型のDCサービスに力を入れている。しかし、さくらインターネットはインターネット事業者や個人向けに強く、双日システムズは主にグループ内向けにDCを運営しているので、エンタープライズを得意とするDC事業者は、これまで双日グループ内に存在しなかった。それが、日商エレのDC事業参入によって、双日グループはエンタープライズ向けのDCサービスを補ったことになる。
分散型のDCサービス、いわゆる複数のDCの“セット販売”は、このところ盛んになっている。例えば三井情報が4社のDC事業者と提携してBCP(事業継続計画)サービスを提供するなど、ベンダー各社が市場開拓に取り組んでいる。そのなかで、双日グループは他社とのアライアンスを組まず、グループ会社のDCをバンドルして、グループとして事業展開するというモデルを選んだ。「サービス提供の継続性や価格設定の柔軟性の面で、アライアンス方式よりも有利だ」(日商エレのエンタープライズ事業本部データセンター事業室の宮倉雅史室長)と判断したのが理由だ。
さくらインターネットは今年11月に、北海道・石狩に日本最大級の大型DCを開設する。日商エレはさくらインターネットと連携し、エンタープライズとシステムインテグレータ向けの石狩DC事業を手がける計画だ。日商エレは、7月1日付でDC事業室を立ち上げ、20人程度までスタッフ増員するなど、DC事業に本腰を入れている。それだけに、売上目標は意欲的だ。「5年後に、50億円程度に拡大したい」(宮倉室長)と鼻息が荒い。(ゼンフ ミシャ)