2004年にIBMのパソコン部門を買収し、2011年にはNECとのパソコン事業統合──。世界大手のパソコンメーカーの一つとなったレノボは、大胆な買収や提携の取り組みで、IT業界に衝撃を与えてきた。そのレノボが、今回はパソコン以外の分野でビジネスを拡大しようと、有力ストレージメーカーのEMCコーポレーション（EMC）との間で、広範なパートナーシップを締結することで、IT業界に新たな波紋を起こそうとしている。

　両社は8月1日に提携を発表した。レノボは、EMCが強みとするストレージやサーバー管理ソフトウェアなどの技術を活用し、まだ力が弱いサーバー/ストレージの領域で本格的に市場に参入する。一方、EMCは、有望市場だが単独での開拓が難しい中国をはじめ、レノボがグローバルで築いている販売網やサプライチェーンを利用するかたちで、成長マーケットでの事業展開を強化する。

　レノボとEMCの提携は、まさしく相手に利益を与えて自分も利益を得るギブ・アンド・テイクの考えを具現化したものだ。

　レノボは、パソコン事業で著しい成長を遂げているが、パソコンのコモディティ化が進むなかで、中長期的に成長の勢いを維持するためには、パソコン事業に加えて新しいビジネスを立ち上げる必要がある。EMCとの提携によって、ストレージなど自社にはない技術ノウハウを短時間で手に入れることができ、EMCの実績の高いテクノロジーを活用しながらレノボのスケールメリットを生かして、比較的安い価格で高品質なストレージやサーバーをつくることが可能になる。

　EMCはここ数年、ストレージ以外にソフトウェア事業の拡大に取り組んでおり、データ分析・活用ツールの品揃えを拡充している。中国では、企業のシステムが複雑化するにつれてEMCがもつハード・ソフト製品の需要が高まっているが、外資系メーカーであるEMCは、営業のリソースや販売チャネルが限られているので、市場を深く広く開拓するためには強力な現地パートナーがぜひともほしいところだ。

　今回、レノボとの提携によって、EMCは中国IT市場で強い販売力をもつパートナーを獲得することができたわけだ。

　レノボとEMCの提携は、日本のIT市場にも大きな影響を与えるとみられる。両社は提携の第一ステップとして、近々、共同のサーバー技術開発プログラムを立ち上げ、一緒に開発したサーバーをレノボブランドで市場に送り出す。今後、レノボが高品質＋低価格の戦略でサーバー/ストレージ事業を本格的に展開すれば、日本メーカーの強力な競争相手になる。サーバー/ストレージ市場の勢力図が変わる可能性が大きい。（ゼンフ ミシャ）