大塚商会は、昨年度(2012年12月期)の連結業績で過去最高の売上高を達成した。2月1日の決算会見に登壇した大塚裕司社長は、好業績でも顔をほころばせることなく、いつものように淡々と、過去と同じ形式のプレゼン資料で実績を説明した。しかし、今回は新たに4枚の資料を用意して、大塚商会が4年ほど前から取り組んできた施策を初めて公開した。それは、「S-SPR」というエンジニア向けの業務支援システムの稼働についての内容。大塚商会の過去最高の業績には、このサポート業務の効率化を支援する新システムが大きく貢献していたのだ。(木村剛士)
大塚商会には、独自に開発した営業担当者向けのシステムがある。2001年に稼働した「SPR(セールス・プロセス・リエンジニアリング)」がそれで、営業担当者の業務のムダを省くための営業支援機能を搭載する。大塚社長が開発に深く関わったオリジナルのシステムだ。その効果は大きく、従業員一人あたりの売上高と営業利益の業績に現れている。2012年の数値を「SPR」が稼働する前の98年と比べると、売上高で51.7%増、営業利益で11.9倍。一人ひとりの生産性が上がっていることがよくわかる。
大塚社長は、営業担当者を増やさずに、既存の営業担当者の業務を効率化することで売り上げを伸ばすことにこだわっている。「SPR」は、それを実現するために開発したもので、決算発表会見では毎回必ず、「SPR」の稼働前の年から記載している社員一人あたりの売上高と営業利益がほぼ右肩上がりで推移しているグラフを披露する。今回もいつもと同じように公開し、12年度の数字が最も上(過去最高)にあることを、報道関係者とアナリストに公開した。
過去最高の売上高を発表した今回の会見では、そのあとの説明内容がいつもとは違った。「S-SPR」という新システムを09年に稼働させていたことを、4枚のスライドをもとに初めて発表したのだ。「S-SPR」とは、サポート業務を効率よく行うためのシステムで、「SPR」のサポートエンジニア版といえるもの。サポートエンジニアのスキルをデータベース化・見える化して、業務に合わせて適切なエンジニアをシステムが自動で見つけ出す仕組みになっている。これにより、仕事の内容と担当エンジニアのミスマッチを防いでトラブルを撲滅し、生産性も上げる。エンジニアの業務を徹底管理して、改善を促す機能もある。大塚社長は、この「S-SPR」を「SPR」が稼働した2年後の03年に企画した。構想段階から数えれば、7年もかけたのだ。「『S-SPR』の効果はすでに出ている」(大塚社長)。例えば、サポートエンジニアが保守業務を担当する一人あたりの複写(コピー)機の台数は09年比で13%増で、エンジニア数を増やさずに1万1805台の複写機を保守することができるようになった。
大塚商会は、2013年度の売上高計画で、過去最高を更新する5360億円を掲げた。営業利益の見通しでも、07年に達成した過去最高益を上回る305億円(営業利益率は8%)とした。売上高と利益で過去最高を狙う。「『S-SPR』をもっと有効活用して生産性を上げろと指示を出している」(大塚社長)。業務のムダを省く徹底した効率化──。大塚商会の今の強さは、それを実現するための二つのシステムに支えられている。
表層深層
「残業時間と休日出勤数は、定期的にチェックして把握している。時間外労働が増えれば、社員を増やす」──。「今年度も社員を増やすつもりはないのですね」という記者の質問に対して、大塚裕司社長はあたりまえのようにこう答えた。ただ、「『賞与が増えるのと、部下が増えるのどっちがいい?』と社員に聞いたら、以前まで多かった『人を増やしてくれ』という声がなくなった」とも続けた。一人あたりの売上高を上げることに徹底的にこだわり、組織の拡大を拙速にはしない。実績を上げた社員はきちんと評価する。そんな大塚社長の考えが、この言葉には色濃く出ている。
「SPR」と「S-SPR」という大塚商会オリジナルの業務効率化支援システムを生み、成果を出して、過去最高の売上高を叩き出した大塚商会。「S-SPR」を有効利用し、サポート業務のムダをさらに省くことができれば、昨年度には達成することができなかった過去最高益を更新する可能性は高い。
大塚社長は会見の最後に、「実は、新たな社内システムの企画に入った。その中身は秘密(笑)。かなり大規模なものになる」と笑みを浮かべながら話した。大塚社長にとっては、営業とサポート業務は効率化し成果を出したがまだぜい肉が残っているということなのだろう。営業力の強さが大塚商会の代名詞のようになっているが、それと同等に、効率化と社員を評価するマネジメントシステムが大塚商会を下支えしているのだ。