インターネット先進国として、中央の行政機関が提供する行政サービスの電子化にいち早く取り組んだ韓国では、行政サービスを統合管理する政府統合電算センター(NCIA)を機能させることによって、電子化への対応をさらに進めている。2017年をめどに、行政サービスを含む業務の60%をクラウドサービスで提供して、さまざまなサービスの連携を視野に入れている。開発にあたっては、ベンチャー企業など韓国の中小ベンダーを積極的に活用していることに特徴がある。世界トップ水準の電子政府を構築した韓国の取り組みからみえてくるIT業界の動きを探る。

キム・ウハン
プレジデント 韓国が電子政府構築に取り組みを始めたのは2000年から。世界に先駆けて電子化を実現したことで、大きな注目を集めた。しかし、当時は各行政機関が個別にシステムを管理していたために、インフラへの重複投資、専門的な人材の不足など、実際の運用管理には課題が多かった。
こうした課題を解決するために、韓国は2005年に中央行政機関の業務システムや行政サービスなどを一括して管理するNCIAを設立した。まず大田広域市(韓国で5番目の大都市)にセンターを立ち上げて、2009年には光州にもセンターを設けた。今では、この2か所のセンターで40にも及ぶ行政機関に関する手続きをはじめとした1200種類ほどの行政サービスを管理している。
NCIAでプレジデントを務めるキム・ウハン氏は、「国を挙げて行政機関のシステムを統合的に管理しているのは韓国だけ」と胸を張る。運用管理で最も重視しているのはセキュリティで、テロや自然災害などに備えて両センターでのバックアップ体制を敷いているほか、とくに中国や南米などから仕掛けられることが多いDOS攻撃を即座に防御するシステムを備えている。センターの人材は、公務員のほか、サムスン電子やLGエレクトロニクスなど韓国大手メーカーからの出向も多く、韓国トップレベルの技術者集団との呼び声が高い。国際連合が発表する「世界電子政府ランキング」では、ここ数年間、毎年トップ評価を受けている。
韓国は、行政業務のほぼすべてを電子化しており、そのシステムをNCIAでスキルの高い技術者が運用管理している。常にシステムの増強を図っているわけだが、そのシステム改善プロジェクトの特徴は、開発面で韓国の中小ベンダーを積極的に採用していることだ。システム構築に関して中小ベンダーが関わる割合は2010年の時点で27%程度だったが、2012年には60%近くまで増えた。2013年は70%を上回る見込みだ。このような取り組みは、中小ベンダーの育成を主な目的としているが、ベンチャー精神が生み出した斬新なアイデアを取り入れることによって、世界で類をみない独自のシステム・サービスを創出するという狙いもあるようだ。
日本政府も、「霞が関クラウド」「自治体クラウド」などと称して、2009年から新たなIT政策「i-Japan戦略2015」に取り組んでいる。しかし、その進み具合は決して迅速とはいえない。韓国のように、中小ベンダーが電子政府プロジェクトに積極的に参画できる仕組みを取り入れることも、電子政府を早期に実現する一つの手法といえそうだ。
今後、韓国政府は行政サービスの連携をさらに図るために、2017年をめどに業務の60%をクラウド化することを計画している。「ビッグデータに向けたプラットフォームの構築を進めていく」(キム氏)との方針を示しており、中小ベンダーを開発面で積極的に参画させることで、さらに電子政府を強固なものにすることを目指している。(佐相彰彦)

NCIAでは40程度の中央行政機関が提供する行政サービスを管理している