システム運用管理システムのビーエスピー(BSP、竹藤浩樹社長)とデータ・システム連携のビーコンインフォメーションテクノロジー(ビーコンIT、新藤匡浩社長)のユーザー企業で構成する「Beaconユーザ会」(坪井祐司会長=LIXIL上席執行役員企画管理本部長)が、3月7~8日に滋賀県で開催した「Beaconユーザシンポジウム」の2日目は、異業種で構成された中堅・若手のIT担当者による32の研究グループが1年間の成果を発表した。今回は、スマートデバイスやクラウドコンピューティング環境下での課題など、時宜を得たテーマにもとづく内容が多くを占めた。このうち、東日本情報活用研究会のHTML5基礎に関する取り組みが最優秀活動賞に選ばれた。(取材・文/谷畑良胤)
最優秀は、HTML5の研究に
2日目は、イベントのメインとなる研究発表会を中心に行われ、各研究会の代表者による各40分間のプレゼンテーションが繰り広げられた。Beaconユーザ会には、主に企業内システムの運用管理を担当するエンジニアが集まっているが、昨今のシステム状況の変化を受け、仮想化やクラウドを含めたシステム環境、スマートデバイスの利用を前提としたシステム運用環境の整備などに関する研究が目立った。
最優秀活動賞に選ばれた東日本情報活用研究会は、「どこまでいくのよHTML5~進化し続けるWebアプリケーション~」と題して、HTML5で追加された新しいタグや各種ウェブAPIについて調査した内容を発表した。同研究会は、HTML4からHTML5への移行に伴って、ウェブを「見るもの」から「使うもの」へ転換させるという仮説を立てて検証。HTML5によって業務アプリケーションが「机上のパソコン」という利用条件から脱却し、スマートデバイスなど場所を問わない業務スタイルを提供すると結論づけた。

全32グループの研究が発表された 優秀活動賞を受賞した3グループのうち、二つの研究会も、スマートデバイスに関連するテーマで発表した。東日本情報活用研究会でタブレットPCの企業導入を研究したグループは、スマートデバイスの導入を増やす上で、省電力化が進んだBluetooth4.0やAR(拡張現実)の活用方法を検討。ARの業務利用例として、屋内の特定位置に付加情報を表示する案内板アプリを開発した。また、東日本情報活用研究会で企業導入におけるスマートデバイスの有効活用を研究したグループは、BYOD(Bring Your Own Device)の利用について、利用者、管理者、経営者の視点でメリットとデメリットを検証。MDM(モバイルデバイス管理)よりも安価なリモートワイプ(遠隔消去)などの対応で、BYODに慎重な企業も導入しやすくなると報告した。研究会は、BYODの企業内導入の許可・禁止の判断基準も示している。
高速DB活用に優秀事例を表彰
一方、前日にはBSPとビーコンITの両社の製品・サービスを利用したユーザー企業10社の事例発表があり、優秀事例発表賞は、大手量販店向けに提供した単品マネジメント(移動平均原価管理)システム例を提示したオープンリソース(小倉博社長)が受賞した。
同社は、ビーコンITの超高速データベース「ARTMAN(アートマン)」の仮想領域のテクノロジーを使い、通常のリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)で不可欠な結合処理を排除し、劇的なパフォーマンスをもたらす単品管理用DBを構築した。

セッションでは、専門家によるシステム運用部門の役割について提案が多く出された(右奥に座るのが元大成建設のCIOで現在オランの木内里美氏) この日はこのほか、1時間半にわたる三つのセッションが行われた。このうち、前回のシンポジウムに続いて2回目の講演となる大成建設の元CIO(最高情報責任者)であるオランの木内里美氏が「経営におけるITの役割、システム部門の役割」について講演。氏は「企業のシステム運用は“お守り”ではない。経営にITを生かすには、運用を考えろ」と苦言を呈し、経営幹部が直接システム運用に関与する組織体制と、企業内の利用者をファシリテイト(促進)するIT担当者を育てるよう提言した。
2日目は、昼食後に世界陸上選手権で銅メダルを二度獲得した元ハードル選手の為末大氏が講演したほか、イベントを締めくくる700人強が一堂に会するパーティが開かれ、ゲストとして爆風スランプがライブ公演した。