アシスト(大塚辰男社長)のデータウェアハウス(DWH)専用データベース(DB)ソフト「Calpont InfiniDB」の販売が順調だ。低コストで高速に大量のデータを分析できる製品として、現段階で大企業を中心に直販で15社が製品を導入した。今後は、ビッグデータ時代の基盤として位置づけるほか、クラウドストレージとの連携強化をアピールすることによって、販社が売りやすい環境を整備。年内にユーザー企業を10社増やす計画だ。(取材・文/佐相彰彦)
汎用的なサーバーでデータを分析
「InfiniDB」は、「高速」で「シンプル」「スケーラブル」が大きな強みで、DWH専用アプライアンスが得意としていた大量データの分析を低コストで実現している。分析集計処理に適した列指向型アーキテクチャの採用で列ごとにデータを圧縮して格納。これによって大量データ処理のボトルネックだった物理I/Oを大幅に削減するほか、マルチスレッドアーキテクチャによってCPUリソースを有効活用して、これまでのリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)では実現できなかった超高速なデータ抽出を可能にしている。

小野明洋 課長 また、高速化やデータの圧縮を自動的に行うので、システムのチューニングやメンテナンスにかかる時間の短縮や維持にかかるコストも大幅に減らすことができる。さらに、最小で1台のサーバーからスタートすることができ、サーバーやCPUやメモリの追加などにも対応しており、ユーザー企業が柔軟に拡張シナリオを描くことができることも売りにしている。
小野明洋・データベース技術本部技術開発部課長は、「汎用的なサーバーでデータを分析できるので、システムをリプレースしなくても導入できる点がユーザー企業にとってのメリット」とアピールする。ユーザー企業の多くは、社内で保有するデータ量が爆発的に増加しており、それらを「ビッグデータ」として有効に活用しようとしている。そんななか、アシストではDWHアプライアンスを購入しなくても大量のデータを分析することができるソフトウェアとして拡販を図っている。2012年3月に発売し、およそ1年半が経過した今年9月の時点で、15社の大企業をユーザー企業として獲得した。
販社のビッグデータ事業拡大に寄与
ユーザー企業の獲得は、現段階で直販がメインだ。これは、従来のRDBMSとは異なる製品ということで、「まずは当社が製品のすぐれている点を訴求して、導入事例を増やさなければならないと判断したから」という。ただ、今後はSIerなど販社を通じて拡販する体制を構築していく。「販売パートナーが売りやすい環境をつくっていく」としている。
例えば、ユーザー企業によるクラウドサービスの利用が多くなっていることから、オンラインストレージの「アマゾンウェブサービス(AWS)」に対応し、AWS環境で利用できる「InfiniDB トライアルキット on AWS」の提供を開始した。このキットは、InfiniDBのフル機能を30日間無償で利用が可能。「パブリッククラウドの利用ニーズが高まっていることから、提供開始に踏み切った」という。このキットを販社経由で提供することを検討している。キットを利用することによって、ユーザー企業がデータを分析することの意義を認識すれば、InfiniDBを拡販するベースを確立することができるというわけだ。
小野課長は、InfiniDBによって「ビッグデータを切り口にビジネスを拡大しようとしている販売パートナーを支援することにつながるのではないか」とみている。アシストでは、ユーザー企業が情報システムを有効活用するための概念としてデータを「つなぐ」「貯める」「生かす」の三つの視点で捉えた「AEBIS(アシスト・エンタープライズ・BI・スイート)」をコンセプトとして掲げている。「InfiniDBは、『貯める』という分野で重要な役割を果たすことになる」とアピールする。年内には販社を通じて10社のユーザー企業を増やすことによって、チャネル体制の確立を図っていく方針だ。