日立製作所は、1月8日、4月1日付で実施する社長交代を発表した。執行役専務の東原敏昭氏が昇格し、代表執行役執行役社長兼COOに就く。日本有数のコングロマリット企業が選んだ次世代のトップは、電力とプラント、IT、社会インフラなど、複数の事業部門を経験し、海外勤務と子会社の社長経験もあるサラブレッドだ。現社長の中西宏明氏よりも9歳若い。記者会見に登壇した現会長の川村隆氏、中西氏、そして東原氏のコメントを集めると、今後の成長分野として、海外と社会インフラ事業の拡大に照準を合わせている姿勢がみえてくる。(木村剛士)

記者会見では現会長(左)と現社長(右)、次期社長(中央)が揃って出席し、写真撮影に笑顔で応えた 日立製作所は、今年度(2014年3月期)の見通し通りにいけば、過去最高の営業利益になる。未曾有の経営危機といわれた2009年度に、現会長の川村氏が社長に就任し、2010年度、川村氏は中西氏を社長に据えて二人三脚体制を敷いた。川村氏が「止血」と表現した構造改革を断行して、子会社の統合や不採算事業部門の見直しを進め、売り上げは落としたものの、利益ではV字回復を果たした。今年度からスタートした中期経営計画を推進している最中であるが、経営再建のメドが立ち、「来年度に入ってすぐに、次のステージに向かうための新体制でスタートしたい」(中西氏)という思いから、このタイミングでトップ人事を発表した。
日立の社長交代は、発表前から一部のメディアで推測記事が出ており、社内調整はだいぶ前から進んでいたようだ。東原氏に社長就任の要請があったのは12月中旬で「中計の初年度だけに、青天の霹靂だった」(東原氏)という。
今年度、過去最高益を計上する可能性が高い日立。次に目指す姿は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスのようなグローバルカンパニーだ。川村会長は会見で、この2社の名前を口にした。複数の事業を展開するビジネス基盤は同じだが、世界市場での存在感は、両社ともに日立より大きい。日立は、中計の最終年度にあたる2015年度に年商10兆円の大台到達を果たすとともに、海外売上高比率を50%に高めるという挑戦的な目標を盛り込んだ。世界市場で存在感を示すという決意の現れである。そのために、海外での需要が見込める社会インフラ事業にも精通した東原氏をトップに選んだのだろう。東原氏は、M&A経験も豊富。昨年度の海外売上高比率41%を、この2年の間で9ポイント高めるのは既存事業だけでは難しいとみられる。東原氏は、M&Aで海外での売り上げを拡大する戦略を、過去の経験を生かして強力に推進するはずだ。
IT業界のリーダーとしての顔をもつ日立だが、複数の事業を展開するなかでITビジネスにどれほど力を入れるかは興味深いところだ。会見で東原氏は、社会インフラ事業の差異化ポイントとしてITを挙げた。日立の全事業セグメントのうち、最も売り上げの規模が大きいのは情報・通信システム部門(IT部門)ではあるものの、記者会見では「IT単体でビジネス展開する」というよりも「社会インフラやプラントなどの事業にITを添えて提案する、ITを他事業部門の付加価値として提案する」という意識がうかがえた。
日立の昨年度の海外売上高比率は41%だが、情報・通信システム部門だけをみると26%と低い。ここに伸びしろがあるのは間違いないので、世界でITを売るための仕組みづくりに力を入れるだろう。来年度と再来年度は、現在推進している中計にもとづいて動くので、戦略に大きな変更はないだろうが、「構造改革は道半ば」(中西氏)。海外のIT事業を増やすための増強策、組織・人事の見直しは十分に考えられ、他事業部門との融合が進みそうな気配を感じる。