業務改革/現場改善コンサルティング会社のインターメッセ(光本茂樹社長)は、ユーザーの「現場のIT化」について大きな課題を抱えていた。同社は建設や設備施工、イベント・広告などプロジェクト型の業態における“現場力”の向上に取り組んでいる。こうした業種は、現場の柔軟な対応や即応性が強く求められ、今も勘と経験と度胸、いわゆる「KKD」で成り立っていることが少なくない。現場の力を高めるためにIT化は欠かせないが、昨今の「全体最適」重視のITシステムの潮流にそぐわない部分もあった。
【今回の事例内容】
<導入機関> インターメッセ2000年設立のコンサルティング会社。建設や設備施工、イベント・広告など、プロジェクト型の業態における“現場力”の向上に重点的に取り組んでいる
<決断した人> インターメッセ 光本茂樹 社長1967年、広島県生まれ。野村総合研究所(NRI)で業務プロセス分析などに従事。99年、業務改革コンサルタントとして独立。以来、ITを活用した現場力強化に取り組む
<課題>業務改革/現場改善コンサルティングの遂行にあたって、現場に最適なアプリケーションを、ユーザー自身でどのように構築するか
<対策>モビラスのスマートデバイス向けアプリケーション自動生成ツール「AppExe(アペックス)」を採用し、ユーザー自身によるソフト開発の自動化に取り組む
<効果>住宅建築業向けの工程管理などで実績が出始めた
<今回の事例から学ぶポイント>現場のユーザー部門自らが、スマートデバイス向けのアプリケーション自動生成ツールを活用して、現場に最適なシステムを開発。現場力を大きく高める
IT活用で「KKD現場」を改革
インターメッセは、「現場の判断」が重要になるプロジェクト型の業態を重点分野に位置づけるコンサルティング会社である。建設や設備施工、イベント・広告などがプロジェクト型の典型的な業種で、現場の力が、成果物やサービス品質を大きく左右する。いわゆる職人気質の経験豊富な人材が「KKD(勘と経験と度胸)」によってプロジェクトを成功に導くことが多いタイプの業態である。インターメッセは、こうした「KKD現場」の生産性をITによって一段と高めることに挑戦している。
しかし、昨今のIT業界では情報システムの「全体最適」を重視するやり方が主流になっていて、現場本位の「個別最適」や「エンドユーザーコンピューティング」は、異端で時代遅れとされることが多い。ITを活用した「現場力の強化」と、その企業が活用するITシステムの「全体最適化」とは、相容れない要素を多分に含んでいる。野村総合研究所(NRI)出身で脱サラ・独立したインターメッセの光本茂樹社長は、こうした現状を踏まえながらも、「プロジェクト型の業態では、ITを活用した現場力の強化こそが本当の意味での業務改革、現場改善につながる」との信念を曲げなかった。
起業したばかりの2000年当時は、現場の業務改善ツールとして、市販の表計算ソフトやデータベース(DB)ソフトを使っていた。だが、これではユーザーの担当者が替わるたびにアプリケーションの構造がわからなくなったり、基本的な構造が前時代的なクライアント/サーバー型であったこともあって、情報共有の面で難があった。そこで出会ったのがスマートデバイス向けアプリケーションソフトの自動生成ツール「AppExe(アペックス)」を開発するモビラスだった。
スマートデバイスで情報共有
モビラスが開発する「AppExe」は、プログラミング言語の知識がなくても、スマートフォンやタブレット向けのアプリケーションを簡単に自動開発できるツールで、クラウド型ソフトウェアサービスとして提供されている。「AppExe」を使えば、市販の表計算ソフトやデータベースを使うように、「ユーザーが自らに最適な業務アプリケーションを簡単に構築できる」と光本社長は直感した。
しかも、市販の表計算、DBソフトで課題だった「マクロやVB(ビジュアルベーシック)で組んだアプリケーションの構造を後任者が理解できなくなる」といった問題も起きない。さらに、スマートデバイス向けのアプリケーションなので、現場で持ち運ぶのに適しているばかりか、常にネットワークに接続しているので、本社オフィスとの情報共有も簡単にできる。「現場で作業する時間帯が、実は最も本社オフィスからのIT支援を必要としているとき」(光本社長)と捉えて、インターメッセが取り組む現場力強化に「AppExe」を本格的に活用することを決めた。
注文住宅の現場での適用例では、例えば工程管理のチェック表をつくり、進捗に応じて次にやらなければならない作業を順繰りに提示。作業漏れを未然に防ぐとともに、本社オフィスと現場と情報を共有して、進捗状況をほぼリアルタイムにダブルチェックできるようになった。こうした情報共有の仕組みによって工程と品質の管理レベルを高めて、ユーザーの競争力の向上に役立てている。
「AppExe」は、画面上でソフトウェアパーツのドラッグ&ドロップや簡単なテキスト入力によって「短時間で、かつ感覚的にスマートデバイス向けのアプリ生成が可能」(モビラスの崎俊治・東アジア営業推進本部長)である。インターメッセでは、ユーザーの現場主導によるアプリケーション開発を推進することで、本業である「現場力向上」を主軸とするコンサルティング業務に専念できるようになった。(安藤章司)