インテル(江田麻季子社長)は、ソフトウェアによってサーバーやストレージ機器、ネットワーク機器などハードウェアのリソースを最適に割り当てる「SDI(ソフトウェア・デファインド・インフラストラクチャ)」に力を入れている。今年5月末に開催された記者会見では、戦略的なIT化による新しいビジネスのあり方を訴えるとともに、パートナー企業がインテルの製品を使ったIT基盤を提供することについてアピールした。(取材・文/佐相彰彦)
クラウドやビッグデータに適したIT基盤

平野浩介
常務執行役 インテルが開催した記者会見の冒頭、平野浩介常務執行役が登壇し、「戦略的ITによる新しいビジネスのあり方」と題して、クラウドやビッグデータに向けたIT基盤に対する取り組みについて説明した。平野常務執行役は、「ビッグデータが、ようやくビジネスとして成立するようになったといえるだろう」と切り出し、話題が先行していたビッグデータの分野が、ITベンダーにとって儲かるビジネスに変化していると分析。また、スマートフォンやタブレット端末が大幅に増加し、国内のモバイル機器の出荷台数が2010年の4000万台規模から2013年に6000万台程度まで伸びている状況を説明したほか、IoT(Internet of Things)によってネットワークにつながるデバイスが2006年に20億、2015年に150億、2020年には500億と急速に増えることを説明。そのような状況にあって、さまざまな機器にインテルの製品・技術が採用されていることをアピールした。
自動車をはじめ、ファクトリーオートメーション(FA)、デジタルサイネージ、ウェアラブル端末など、ネットワークにつながるデバイスが増え、そのデバイスがすべてデータセンター(DC)につながる状況になれば、DCのトラフィックは膨大なものとなる。その解決策としてインテルが掲げているのが、サーバーやストレージ機器、ネットワーク機器をソフトウェアで制御し、自動でリソースを最適化する「SDI」だ。平野常務執行役は、「例えば、従来型のDCでは新規サービスの提供を始めるまでに要する時間が月単位だったのが、SDIベースのDCでは分単位になる」という。このようなIT基盤が整えば、コスト構造やビジネス基盤の抜本的な改善を図ることができるだけでなく、新しい収益源を確保できる可能性がある。インテルのプロセッサを採用すれば、ITベンダーが新しいビジネスに着手できるようになることをインテルは訴えているわけだ。
新たなIT基盤を提供するベンダーが相次ぐ
会見では、すでにビジネスを変革する新たなIT基盤の開発を進めているITベンダーが、それぞれ取り組んでいることを発表した。登壇したのは、NTTデータグループ、ノーチラス・テクノロジーズ、レッドハットなどだ。
NTTデータグループでは、「ソーシャル」「エンタープライズ」「M2M」という三つを柱に据えてビッグデータをフル活用する分析サービスなどを提供している。そのなかで、NTTデータ数理システムでは、「ソーシャル」の観点で金融市場を対象とする「Twitterセンチメント(市場心理)指標」を開発し、「日経平均ボラティリティ-・インデックス」との相関性を検証した。その分析を行う端末にインテル Xeon プロセッサー E7v2ファミリーを採用。すべての株式関連ツイートにネガ/ポジを付与して1日で処理できるツイートの量は、通常のデスクトップパソコンが搭載しているCPUの1000倍程度だったという。また、NTTデータグローバルソリューションズは、インメモリデータベース「SAP HANA」によるビッグデータ処理で、インテル Xeon プロセッサー E7v2ファミリーを採用。処理時間を短縮できたほか、処理待ちが発生せず、必要なときに100%のリソースを使い切ることが検証できたという。
ノーチラス・テクノロジーズは、インテル Xeonプロセッサーを搭載したサーバーの分散スケールアウト技術を紹介。業務システムの基幹バッチでHadoopを使い、ディスクI/Oのボトルネックを解決してCPUの性能を使い切ったという。
レッドハットは、Linuxディストリビューション製品の「Red Hat Enterprise Linux」が標準基盤になりつつあるとしたうえで、政府や通信事業者、金融機関などがインテル製品と組み合わせて導入するケースが多くなっていることを紹介した。
インテルの最新プロセッサの採用によって 「SDIがあたりまえの世界を実現していく」と、平野常務執行役は訴える。今後、データ量の増大や、クラウドサービスの提供拡大によって、アプリケーションやサービスに適したハードウェアリソースの割り当てが常識になっていくにつれて、インテルのプロセッサがビッグデータの分析・活用に大きく寄与することだろう。