キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ、川崎正己社長)は、同社グループが強みとする映像・画像(イメージ)関連の商材を意欲的に拡充している。直近では医用画像向けクラウドサービスやウェブ会議、ビデオ会議の関連商材を強化。映像・画像分野での強みを前面に押し出しつつB2B領域での売上増を目指す。(取材・文/安藤章司)
医用画像クラウドに参入

キヤノンMJ
鷲足猛志
室長 キヤノンMJは医用画像クラウドサービス基盤「Medical Image Place(メディカルイメージプレイス)」を新しく開発。この基盤を活用するかたちで、この10月1日に「遠隔読影インフラサービス」を始めた。遠隔画像診断サービスを手がけるメディカルイメージラボと共同開発したもので、医用画像を遠隔地にいる読影医に診断してもらう仕組みだ。
医療現場では、レントゲン撮影やCT(コンピュータ断層撮影)、MRI(核磁気共鳴画像法)といった画像撮影装置から大量の画像データが出力されるが、これを読み解いて診断を下す専門医(読影医)は慢性的に不足しているし、都市部に偏重する課題を抱えている。遠隔画像診断はこうした課題の克服に役立つと期待されている。
今後は、さらに一歩踏み込んで「医用画像を保管したり、他の医療システムと連携するクラウドサービスを展開していきたい」(キヤノンMJの鷲足猛志・総合企画本部HCS推進室室長)としており、サービスメニューを拡充していく。「医用画像の外部保管サービス」は早ければ2015年度上期中に、他のシステムとの連携を含む総合的な「医用画像システムサービス」は15年度下期中にも始める計画だ(図1参照)。
ビデオ会議システムに商機

キヤノンソフトウェア
橋本史朗
担当課長 また、キヤノンMJグループのキヤノンソフトウェアとキヤノンシステムアンドサポート(キヤノンS&S)も、相次いで映像関連商材を強化している。キヤノンソフトは独自に開発したエンジンを駆使し、ウェブ会議システム「IC3(アイシーキューブ)」のiPadなどのスマートデバイスへの対応を強化したのに続き、キヤノンS&Sは米Tely Labsが開発したビデオ会議システム「telyHD Pro」の販売をこの10月から始めた。
ウェブ会議はパソコンやスマートフォン、タブレット端末といった既存のデバイスを活用して、安価に映像を交えた会議システムを構築できるのが最大の特徴だ。標準でカメラやマイクが内蔵されているスマートデバイスを活用すれば、「出張先や移動中からでも会議に参加したり、傍聴したりできるのが、従来の据え置き型の会議システムと大きく異なる点」(キヤノンソフトの橋本史朗・パッケージソリューション事業本部営業二部営業1課担当課長)と話す。調査会社のシード・プランニングの調べでも国内のウェブ会議市場が右肩上がりで伸びていることが裏づけられている(図2参照)。
一方、ビデオ会議は、専用のセットトップボックス(STB)をテレビやパソコンの画面に取りつけて使う。専用機器を設置して使うビデオ会議方式は、ウェブ会議のように出先から気軽に会議に参加するというような柔軟性には欠けるものの、「ITの知識がまったくなくても使用できる」(キヤノンS&Sの牧野友貴・ITソリューション企画部ITプロダクト企画課課長)のが売りだ。

キヤノンS&Sの牧野友貴課長(左)とデータコントロールの井手文太氏
さらに、据え置き型のビデオ会議機器は、これまで高価なものが主流で、中小企業ユーザーには投資負担が大きかった。この点、telyHD Proは1台あたり9万8000円(税別)からと、価格を抑えたことが評価され、「北米市場での販売台数ベースのシェアはシスコシステムズに次ぐ第2位」(Tely Labsの国内代理店を務めるデータコントロール販売推進部テク二カルサポートGの井手文太氏)と、これまで据え置き型のビデオ会議システムが入り込めていなかった中小企業市場や企業の受付、案内所、介護施設、保育所などの活用用途を広げている。
キヤノンMJグループでは、Medical Image Placeを軸とする医用画像システム事業で2017年度に年商50億円、ウェブ会議システムのIC3事業では向こう3年でライセンス販売の倍増、ビデオ会議のtelyHD Proは2016年度に年間500台の販売を目指す。