外食業界が一番盛り上がる忘年会シーズンを終え、課題はあるものの回復の兆しが見えてきた。相変わらずwithコロナ時代は続いていくことになるが、今回は忘年会シーズンを振り返りながら2023年以降の動向を予測し、DX化アプローチの余地について提示したい。
昨年の忘年会の振り返り
外食業界の22年は飲み会の自粛傾向が継続していたものの秋ぐらいから小規模宴会を中心に回復傾向にあり、売り上げがピークとなる忘年会シーズンの数値はどうだったのか、を整理すると下記のようになる。
外食業界においてはコロナ前(19年)と比較してどれくらい回復しているのかを見る方が主流となっているが、「予約件数(1店舗当たり)」は266件とコロナ前である19年対比で145%、「1グループ平均予約人数」が8.3人から3.8人になったことで、「予約人数(1店舗当たり)」は1506人から1011人と19年対比67.1%にとどまった。「当日予約割合」は9.1%から52.7%と半数以上までに増加し、「平均予約日」は12.7日前から4.3日前となった。
予約件数自体はコロナ禍よりも伸びており、店舗としては予約が入っている実感があるものの、予約人数が7割弱となっているため売り上げも同程度にとどまっていると考えられる。「当日予約割合」も高いことから、ウォークインもそれなりに入っていたと考えられ、現場としては非常に忙しい忘年会シーズンではあったが、売り上げが伴っていなかったというのが正直なところではないだろうか。
ここで重要なのは忘年会シーズンだとしてもコロナ禍における傾向が大きくは変わらなかったことである。
2023年の動向
「【コロナ禍における外食業界のDX化アプローチ・1】浮き彫りになった課題とは」(2022年5月12日掲載)の記事において、DX化において重要なのは「予測」と「柔軟性」と記載したが、大きな方向性としては変わらず、そこに「費用対効果」がより一層求められると考えらえる。ここでいう「費用対効果」とはコストやROASではなく、工数とそこから得られる成果(数値以外も含めた)といった方がニュアンスとしては近い。コロナ禍において深刻な人手不足になる中で、店舗運営や集客でやらなくてはいけないことは一層増えており、全てに対して100%注力することができない。そのため、必要最低限のコストおよび工数(かけられる時間)で、いかに合格ラインを超えるのか、ということである。
限られたリソースで合格ラインの店舗運営を実現するためには「何を自分達でやらないのか」「何をアウトソーシングするのかor別の何かで対応するのか」となる。その際、人のやっていることをシステム・AIに置き換えるという発想ではうまくいかない。
あるチェーンではあえて紙による注文を残すことによってコミュニケーションや効率化が促された事例もあるように、必ずしもシステム化することが最良とは限らない。特に外食業界においてはアナログなところに価値を見出されることもしばしばある。
近年、一元管理ツールを導入して工数削減に成功した企業も多いが、今後は「一元管理×ローカライゼーションの両立」という壁を乗り越える必要がある。オウンドメディアやGBP(googleビジネスプロフィール)、LINE、各種SNSなどにおいては画一的な情報を全店舗で掲載しても、成果を出すのが難しくなって来ている。SEO/MEO的な観点でも、ユーザー目線でもローカライズされた情報がなくては、競合に勝つことができない。よく特定エリアにおいては「チェーン店よりも個店が強い」という話があるが、それは個店が徹底的にローカライズされているからに過ぎない。
外食業界を生き抜くための一つの考え方
外食業界に対してソリューションを提供する企業としては「アナログな店舗運営をシステムでいかに実現するのか」というぐらいのコンセプトで行った方がうまくいくのではないか、と最近は良く思う。「人×システム」「AI×人」といったキーワードも良く聞くが、どうしても発想がシステムありきになってしまって、机上の空論的な形になってしまいがちである。顧客との接点については「アナログ」を残しつつ、裏側が全て「システム化」されている、これが一つの理想形ではないだろうか。
■執筆者プロフィール

左川裕規(サガワ ヒロキ)
イデア・レコード 取締役
早稲田大学卒業後、広告会社へ入社。マーケティングプランナーとして従事。家電メーカーや大手通信会社、商業施設などのプロモーション戦略や、Webサイト構築を担当。その後、NRIネットコム(現)に入社。WebテクノロジーとUXの設計構築コンサルタントとして、大手証券会社のWeb戦略、国内流通産業大手のインターネットマーケティング戦略、ネット損保のWebプロモーション戦略に参画。2016年、イデア・レコードに入社。