今が売り時、その理由 急速には普及はしなかったブレード。今後も一気に売れるような商材にはならないかもしれない。しかし、数年前に比べて、ブレードを売りやすい環境は確実に整ってきている。着実に増えているユーザーの事例に中堅・中小企業(SMB)向け製品の増加、メーカーの支援策の充実など、IT企業がブレードを有望商材の一つと捉えることができる状況になりつつあるのだ。
ラインアップ、支援策ともに充実 売り時の理由(その1)
クラウドの本格的な浸透
省電力に省スペース設計、そして運用の効率化。これらを満たす点においては、ラック型やタワー型に比べてブレードのほうがすぐれているのは明らかだ。ブレードは急速には普及はしなかったものの、ジワジワと普及している。その理由は、サーバー統合やクラウド基盤のシステムとして採用された点にある。ここ最近みられるユーザー事例でも、そのことは実証されている。
調査会社のIDC Japanは、国内クラウドサービス市場は、2015年まで一貫して右肩上がりで成長し、15年には10年比4.3倍の1947億円に成長すると見込んでいる。自動化、仮想化技術を活用したクラウドシステムや、それを稼働させるデータセンターでは、「ブレードを選ぶ確立は高まる」(ノークリサーチの伊嶋社長)。クラウドが浸透すれば、自ずとブレードが伸びる構図だ。
クラウドはブレードブームが訪れた時は、まだその概念だけが先走り、実態が伴わないこともあって、実需が低水準だった。しかし、今は状況が変化している。ユーザー企業がクラウドを利用したり、自社向けに構築したりする需要が生まれている。ブレードを活用する土壌が整ってきたのだ。
あるメーカーのパートナービジネス担当者はこう話している。「正直にいえば、ブレードが登場したばかりの頃はコンセプトばかりをユーザー企業に押し付けて、無理やり提案していたようなところもあった。しかし、今はクラウドが本格的に浸透してきたことで、ブレードを顧客に自信をもって提案できる商材になった」。クラウドの普及がブレードのニーズを本格的に押し上げる状況になったのだ。
売り時の理由(その2)
“こなれた”メーカーの支援策
 |
NEC 本永実 グループマネージャー |
エンクロージャと呼ばれる特殊なきょう体にサーバーを差し込んで動かすブレードサーバー。それを取り扱うIT企業にとっては、ラック型とタワー型にはない特別な技術力と提案力が必要になる。ブレードを統合管理する運用ノウハウが求められ、ブレードの提案には必須の仮想化技術の知識や、ラック型に比べて高価であることを説得できる営業力など、ユーザー企業から受注するには、それなりの準備をしなければならない。
この問題を解決するために、各メーカーが共通して力を入れているのが、IT企業向けのトレーニング活動だ。ブレードを他メーカーに先んじて販売した日本IBM、ブレードでトップシェアの日本ヒューレット・パッカード(日本HP)、x86サーバー全体でNo.1のNECの3社を筆頭に、メーカー各社は教育制度を強化してきた。とくにNECの内容は充実している。
NECは、フォルトトレラントサーバー(FTサーバー)と呼ぶミッション・クリティカルな無停止型サーバーの販売を伸ばすために、それを売るIT企業向けの技術者認定制度を立ち上げている。これが、商材の付加価値を求めていたNECのパートナー企業にマッチし、900人以上の技術者が育った。結果、FTサーバーの販売は前年比30~40%で伸びている。NECは、このヒットプログラムをブレードに移植した。技術者向けの「SIGMABLADE技術認定制度」と営業担当者向けの「SIGMAセールス・マスター」という教育・認定制度をつくって、無償で展開している。
その成果が現れて、「ブレードサーバーの販売台数は前年比で、30~40%増えている」(本永実・プラットフォームマーケティング戦略本部<商品企画チーム>グループマネージャー)。しかも、「販売店(NECのパートナー企業)経由の販売が非常に伸びている」と、本永グループマネージャーは、ブレードの間接販売が本格的に立ち上がった感触を得ている。
NECだけでなく、各メーカーとも、数年前から始めたブレード拡販のためのパートナー向け支援制度を増強している。各メーカーの“こなれた”支援制度は、過去のそれとはまったく異なる。利用する価値は十分にあるタイミングに入っているのだ。
売り時の理由(その3)
SMB向けラインアップが揃う
 |
| 富士通が昨年11月に発売した中小規模システム向けブレードサーバー「PRIMERGY BX400」。写真はフロアスタンドキットを利用したもの |
ブレードがこれまで思うように伸びなかった理由の一つとして、大規模システム向けの高額モデルが中心で、中規模システム向けのラインアップが乏しかったことが挙げられる。しかし、今はその状況が変わりつつある。各メーカーは、SMBに適した新商品を続々とラインアップしてきた。
例えば、x86サーバーで2010年度シェアを急進させた富士通は、昨年11月に中小規模システム向けと明確に謳ったブレードサーバーの新モデル「PRIMERGY BX400」を発売した。省スペース、省エネルギー、軽量、そして静音を売りにし、中規模システム向けのサーバー集約を見越して製品開発した。フロアスタンドキットと呼ばれる専用機器を使えば、通常のラックに収容する必要がなく、オフィスのフロアに設置することができる。サーバールームをもたない中小規模事業所でも、容易にブレードを活用できるようにしている。芝本隆政・プラットフォームビジネス推進本部PRIMERGYビジネス推進統括部プロジェクト部長は「発売以来好調で、パートナーからの評価も高い」と好感触を得ている。
NECも、ほぼ同時期の昨年12月、SMB市場向けの「Express5800/SIGMABLADE」を発表している。ブレードシャーシにUPS(無停電電源装置)と、テープバックアップ装置をエンクロージャに収容することができ、サーバーだけでなく、UPSやバックアップ装置なども統合したいというSMB特有のニーズに応えた。NECの本永マネージャーは、ブレードの販売が伸びているなかでも「サーバーの10台ほどを集約したいという中規模システムの統合案件が昨年度から非常に増えている」と話しており、SMBからのニーズが高まってきていることを実感している。
ユーザーのすそ野が拡大したことで、ブレードが売れる環境がより整ってきたわけだ。
売り時の理由(その4)
東日本大震災の影響、DC特需
甚大な被害をもたらした3月11日の東日本大震災。それは、IT業界にも多大な影響を与えている。一つは、ユーザー企業が事業継続計画(BCP)を真剣に考え始め、情報システムを自社で保持・運用せずに、専門のIT事業者に預ける動きが出てきたことだ。もう一つは、計画停電。東京電力は計画停電を一時中止することを発表しているが、エアコンの需要が強まる夏には、再び広範に計画停電を実施する見込みで、その場合は東京23区でも実施される可能性が高い。自社でシステムを運用する企業にとっては、システムの停電対策が急務となり、そうなれば、BCPの観点からシステムはIT企業に預けたほうがいいという機運が高まる可能性が高い。この震災が、期せずしてデータセンター(DC)事業者に特需をもたらすという構図が生まれたのだ。
ブレードサーバーの出荷台数のうち、約半分はDCで稼働しているといわれる。DCにシステムを預けるユーザー企業が増えれば、自ずとブレードに弾みがつく構図が生まれる。DC事業者に納入するブレードサーバーメーカーはもちろん、プライベートクラウドを構築する案件も増えるはずで、その構築を任されるSIerもブレードを活用するケースが増える。
予期せぬ非常事態で、DCにシステムを預ける機運が高まり、省エネ設計で、とくに大規模なシステムで効果を発揮するブレードが存在感を増すのは確実だ。