海外
国内市場に限界
アジアを舞台に成長を期す
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三井情報 鈴木茂男 取締役常務執行役員 |
NIerは、サービス事業に本腰を入れることに加え、今年後半から、スピードを上げて海外事業を実のあるものにすることに取り組んでいる。海外では、ネットワーク構築のほかに、将来、サービスを海外での主力商材にして、「サービス」と「海外」の取り組みが綿密に結びついている。
今年8月に日商エレがベトナムの首都・ハノイに現地法人を設立したのに続き、9月には三井情報がロンドンとシンガポールの2か所に現地法人を立ち上げた。また、来年2月をめどに、インターネットイニシアティブ(IIJ)の子会社であるIIJグローバルソリューションズ(IIJグローバル)が中国・上海に現地法人の設立を予定している。
海外事業の拡大を期す ロンドンとシンガポールにオフィスを開いた三井情報は、以前から米国に現地法人をもっている。今後、米国とロンドンの拠点を通じて、米Verizon Communications(ベライゾン)と独SAPとそれぞれの地域に本社をもつ有力パートナーとの関係を強めて、ICTの最先端技術をいち早く取り込む。それを踏まえて、シンガポール拠点をベースとして、最新のICTソリューションをアジア各国の市場で展開する。簡単にいえば、「欧米で商材を揃え、アジアをマーケットとして(日系企業向けに)その商材を売る」(事業統括の鈴木茂男取締役常務執行役員)という戦略だ。
ロンドンとシンガポールの拠点は、合わせて10人ほどの従業員が働いており、現在、各国の法律や市場動向、ICT事情についての調査を行い、それに基づいて事業計画を立てることを役割としている。まずは日系企業を狙い、将来、ターゲットを現地企業に広げるプランだ。鈴木取締役常務は、「3年後までに、海外事業をしかるべき大きさにしたい」との意気込みを示す。
アジア各国に拠点を展開 IIJグローバルは、来年2月の中国現地法人の開設をきっかけとして、中国に進出した日系企業向けのネットワークサービスの展開に力を入れていく。それに先駆けて、今年9月にタイの首都・バンコクに駐在員事務所を設立した。駐在員事務所は、タイの洪水の影響によって事業開始の時期が若干遅れているが、これから、現地の経済情勢や市場動向などの調査活動と情報収集を行う。それを通じて、現地日系企業との関係を強化する方針だ。
IIJ本体の鈴木幸一社長は、「とくにIPv6ソリューションに関して、アジアでの需要が高まっている」とにらんでおり、拠点を順次設置し、強固な営業体制を整えながら、中長期をかけて海外事業をビジネスの柱にしていく。
現地企業をターゲットに  |
日商エレクトロニクス 水嶋恒三室長 |
ベトナムに現地法人を立ち上げた日商エレは、主に日系企業をターゲットとする三井情報など多くのNIerと異なり、「ネットワーク構築を、最初から現地の大手テレコム会社に提供する」(海外事業推進室の水嶋恒三室長)という戦略を採っている。
ベトナムは、携帯端末の急速な普及によって、ネットワークの強化が必要なテレコム会社向けのネットワーク構築がビッグビジネスになりつつあり、米国の大手ネットワーク機器メーカーがベトナムでの事業展開を加速している。日商エレは、この状況を踏まえて、まさに今のタイミングでベトナム進出を決めたのだ。
同社は、ベトナムをアジア戦略の第一弾として、順次、インドネシアやフィリピン、台湾などに事業領域を拡大する構えだ。
記者の眼
NIerの経営層は、「サービス」と「海外」をキーワードにした新しい事業開拓に向け、今年、基盤づくりに力を注いできた。来年から取り組みをさらに具体化し、実ビジネスに結びつけていく。新規事業の開拓が必須のNIerは、果たして、高めに設定したサービス/海外の売上目標をクリアできるのか。引き続き、彼らの来年からの動きを追っていきたい。