【ベンダーの取り組み】大塚商会
2011年度は120%超の成長 SI/NIのスキルが強み

北川達史部長 大塚商会は昨年度(11年12月期)、ビデオ会議関連ビジネスの売上高が前年比120%を超えた。この要因について、北川達史・通信ネットワーク部門部長は、「システムの低価格化や安定した通信環境によって、ユーザー企業のすそ野が広がっていること」を挙げた。
このような状況にあって、システム構築のSI力、ネットワーク構築のNI力、そして、テレビなど家電のスキルを大塚商会がもっていることもビジネス拡大の要因だ。北川部長は、「ビデオ会議は、ITとネットワーク、家電を知らなければユーザー企業に提案することができない特殊なシステムでもある」と説明している。
大塚商会は、自社でもビデオ会議システムを導入しており、23年の歴史をもっているという。本社と全国の支社・支店をつなぎ、複数人での打ち合わせに使用することが多い。外出の多い営業担当者などにはタブレット端末も支給しており、いつでも会議や打ち合わせに参加できるようになっている。「あたりまえのように業務で使っているノウハウを生かして、ユーザー企業に提案している」という活動も、同社のビジネス拡大に寄与している。
さらに、通常はディストリビューションビジネスを手がける部門で販社とのパートナーシップを図っているが、ビデオ会議関連に関しては、ネットワーク部門で販社に対するサポートに取り組んでいる。加えて、「教育機関など特定業界でSIerなどと新規にアライアンスを組むケースも出てきている」としている。
「ユーザー企業は、ディスプレイの大画面化によって参加者の表情がわかる会議・打ち合わせができる機能を求めており、パネルへの入力機能で質の高さを求めている」(北川部長)とみており、70インチ以上のディスプレイや書き込み可能なアプリケーションを提案していく方針だ。今年度は、「昨年度までとはいかないまでも、伸びることは確か」と自信をみせている。
【ベンダーの取り組み】VTVジャパン
サポート・サービスが強み 3年以内に売上高を2倍に

栢野正典代表取締役 ビデオ会議関連システムの専業販社であるVTVジャパンは、ポリコム、シスコシステムズ、ソニー、LifeSize、RADVISION、Vidyo、anetなど、取り扱うメーカー製品が幅広い。このなかでとくに販売に力を入れているのはRADVISIONの製品だ。栢野正典代表取締役は、「一次代理店なので利益率が高いことと、取り扱っているベンダーが少ないので差異化が図ることができるから」と理由を語る。
これまでに開拓してきたのは、銀行や保険、リース会社など。首都圏を中心に案件を獲得してきた。ただ、最近は「地方銀行がビデオ会議システムで県内の本店と支店をつなぐ動きが目立ってきている。さほど離れていない場所であっても、情報を密に共有したいとの理由で導入が進んでいる」という。今後も、ビデオ会議システムを初めて導入する企業が増えると見込んでいることから、他社との差異化ができるRADVISION製品の拡販を継続し、運用サポート・サービスに力を入れていく。
運用サポート・サービスのメニューは、トラブル時に遠隔で回避する「リモート保守サービス」やオンサイトで点検や相談を受け付ける「オンサイト点検・相談サービス」など一般的なサポートのほかに、会議運用を遠隔で管理する「会議運用代行リモートサービス」や、会議でトラブルが起きないように訪問して操作をサポートする「会議立会いサービス」など、ユーザー企業のニーズを吸い上げて9種類を揃えている。同社が導入したビデオ会議システムだけをサポートするのではなく、「他社製品に対してもサポートを受け付けるようにした」としている。他社から仕入れて売るSIerと運用サポート・サービスだけでアライアンスを組むことを検討。これによって、売上高を「3年以内に現状の2倍以上になる15億円を目指す」という。
【ベンダーの取り組み】ソフトバンクテレコム
1年間で3年分の目標を達成 代理店制度の設置を検討

櫻井尚人課長 ソフトバンクテレコムでは、クラウドサービス「ホワイトクラウド」でビデオカンファレスサービスを提供している。昨年7月に、ビデオ会議システムとスマートデバイス、クラウドサービスを接続する「タイプ1」の提供を開始。今年2月には、スマートデバイスとクラウドサービスをつなげる「タイプ2」を提供した。2種類のサービスで獲得したID数は、今年8月末の時点で3600ID。このID数は、3年間で達成する予定だったが、わずか1年ほどで達成したことになる。このサービスの責任者である櫻井尚人・営業開発本部法人データサービス部カンファレンス課長は、「当初の計画を大きく上回って、クラウドの可能性を改めて実感した」という。
サービスの提供にあたっては、これまでiPadやiPhoneなどスマートデバイスを中心に通信回線を組み合わせた提供を重視してきたこともあって、販社を一切使わず、直販を中心に案件を獲得してきた。しかし今後、さらにID数を増やすためには、「さまざまな角度から新規顧客を開拓していかなければならない。そのため、販社網を構築していく」との方針を打ち出した。
販社として想定しているのは、SIerやネットワーク系インテグレータという。「ビジネスを手がけてわかったのは、ビデオ会議システムの専用端末を設置しているユーザー企業が新しい用途としてクラウドサービスに関心を高めていること」として、専用端末とクラウドを組み合わせた「タイプ1」でネットワーク回線を獲得できると判断し、ビデオ会議システムの専用端末の販売とネットワークの構築ができるインテグレータとのパートナーシップ深耕を追求していく。
ソフトバンクテレコムが「ホワイトクラウド」関連ビジネスを拡大するためにこれまで重きを置いていたのは、SaaSやIaaSなどサービスを充実することだった。もちろん、ISVなどとのパートナーシップ深耕を重視していることから、サービスの拡充には継続して力を注いでいくが、それぞれのサービスを拡大していくには、販社を獲得することが重要なポイントと捉えたことになる。櫻井課長は、「インテグレータの強みと当社のサービスを組み合わせて新しいソリューションを創造していく」との考えを示す。
記者の眼
今回、SIerのなかでビデオ会議システムの提供を得意とする大塚商会、専業販社のVTVジャパン、クラウドサービスを提供しているソフトバンクテレコムを取材して明らかになったのは、ITとネットワークの両方のスキルが高くなければビデオ会議システムを提供することは難しいということだ。専用端末を会議室に設置するだけでなく、ウェブ会議システムと連携させてパソコンから会議や打ち合わせに参加したり、スマートデバイスからアクセスしたりするなど、ユーザー企業の用途が広がっている状況にあって、会議や打ち合わせができるようにシステムを構築するだけでなく、用途を踏まえたSI力が求められるということだ。ネットワークについては、外出先からでも遅延なく使えることを前提にしたインフラの構築も必要になる。
また、各社とも販社経由でのビジネスモデルを構築しようとしている点が新しい動きといえる。販社網を形成して、販社が対応できないトラブルに関してサポートする。ビデオ会議関連に対するユーザー企業のニーズが高まってきていることに加え、アプリケーションやサービスを中心に今後も市場が伸びることからも、ここで一気に需要を開拓して市場での主導権を握ろうとしている姿が垣間見える。