「Windows XP」のサポートが、2014年4月9日(日本時間)に終了する。サポート終了に伴い、セキュリティ更新プログラムが提供されなくなるので、「XP」はぜい弱性リスクを抱えることになる。つまり、「XP」ユーザー企業にとって、OSの乗り換えは必須となるわけだ。法人市場には、12年11月時点で1419万台(IDC Japan調べ)の「XP」機が残っていることから、IT業界にとってOSの乗り換え需要は大きなビジネスチャンスとなる。しかし、現状では「XP」ユーザーがOS移行に課題を抱えているケースが少なくない。パートナー各社は、どのように移行を推進しようとしているのか。(取材・文/真鍋武)
「XP」ユーザーに欠かせない「OSの移行」
●増大するセキュリティリスク 
日本マイクロソフト
ゼネラルマネージャー高橋明宏
執行役 「Windows XP」のサポートが終了するのは、2014年4月9日(日本時間)。サポート終了がユーザーに与える影響の一つは、「XP」が仕様変更や新機能のリクエストに応えられなくなることだが、最も重要なことは、セキュリティの更新プログラムが提供されなくなることだ。これによって、14年4月10日以降、すべての「XP」はぜい弱性のリスクを抱えることになる。ぜい弱性は、絶えず発見され続けており、とくに近年では、ネットワーク感染型のマルウェアや標的型攻撃が急増して、危険性が高まっている。セキュリティ上の欠陥が発見されてから対策をとる以前に攻撃されてしまうゼロデイ攻撃も頻発している。「XP」ユーザーは、セキュリティ上のリスクをみすみす見逃すわけにはいかないので、サポートが終了するまでにOSを移行する必要がある。
●法人の半分弱は未だ「XP」 しかし、調査会社のIDC Japanによると、2012年11月時点で、法人市場のPC全3517万台のうち、40.3%の1419万台が未だに「XP」という状況にある。市場にこれだけの「XP」が残っている理由は、その完成度の高さにあって、「大企業から中堅・中小企業まで本当の意味で市場に広がったOSで、『XP』だけでしか使えない業務アプリが多く存在する」(日本マイクロソフトゼネラルビジネスゼネラルマネージャーの高橋明宏執行役)。そうなると、次世代OSの「Vista」「7」「8」は、たとえ性能がすぐれているとしても、わざわざ「XP」から乗り換えてOSを刷新するというメリットを見つけにくい。さらに、OSの移行には、多額のコストや手間がかかる。こうした理由で、いまだに多くの「XP」が現存しているのだ。
●危機感に乏しい中堅・中小企業 
IDC Japan
片山雅弘
グループマネージャー では、「XP」ユーザーは、どの程度サポート切れに危機感を感じているのだろうか。IDC JapanPC、携帯端末&クライアントソリューションの片山雅弘グループマネージャーは、「大企業はすでに移行を開始しているものの、中堅・中小企業(SMB)は、いまだ移行に積極的な姿勢をみせていない」と指摘する。大企業は、セキュリティに詳しい情報システム部門を抱え、コンプライアンスも徹底していることから、サポート終了に合わせてOSの移行が終了するように1~2年かけて計画的に刷新を進めている。一方で、SMBでは、情報システム部門をもたない企業も多く、最近になってやっとOSの刷新を知ったという企業もある。そうした企業でも、セキュリティに詳しい社員はサポート切れに危機感を抱いているが、経営陣の認識が甘く、「サポートが切れてからOSを変えればいい」と安易に考えているケースも少なくない。こうした実情から、片山マネージャーは、「大企業は13年末までにほとんどの移行を終えるだろう。そのあとで、SMBが徐々に移行を進めていく」と分析している。
しかし、大企業が計画的にOSの移行を進めているといっても、すべてがスムーズに運んでいるわけではない。製造業などの大企業のなかには、『XP』でしか動かない業務アプリが使われているうえに、業務システムの刷新の時期がすでに決まっていて、仮にリスクを抱えることになっても、サポート終了までにOSを移行できないケースもある。
また、OS移行に意欲的であっても、コストを捻出できなかったり、OS移行のやり方がわからないなどの事情も阻害要因としてある。こうした課題を解決しなければ、簡単には移行を進めることができない。
●今年秋が移行開始の期限? サポート切れと同時に、すべての「XP」ユーザーがOSを刷新するとなると、ハードウェアの供給が足りなくなったり、OSの移行を支援するSEが不足したりと、ITベンダーにも対処できない事態になってしまう。リコーの窪田大介専務執行役員は、「1台のPCを『XP』の環境から『Windows 7、8』に切り替えるには、どんなに短くても1時間はかかる。OSのインストールだけではなく、認証やセキュリティの設定、アプリケーションやデータの移行などの作業が必要だからだ。事業を継続しながら大量の台数のOS移行を進める場合には、さらに時間が必要だ。ベンダーのリソースは限られているので、ユーザー企業はサポート終了の対策を1年後に練るのではなく、今すぐに検討して、遅くとも今年の9月頃までには移行を開始してほしい」と訴えている。
こうしたことから、日本マイクロソフトは、4月9日、サポート終了までの1年を移行強化期間と位置づけ、パートナー企業約360社と連携して「XP」ユーザーのOS移行を支援すると発表した。以下、ITベンダー(SIer、PCメーカーなど)の移行支援策をみていく。
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