大企業がすでに活用を始めたB類型
中小企業は投資利益率の計算がハードルに
メーカー、販社や税理士の連携が重要
●計算モデルの策定は困難 
大塚商会
須田洋一
専任課長 対象が幅広いB類型は、「すでに大企業を中心に、申請の動きが顕在化している」(経産省の松本課長補佐)という。中小企業にとってもメリットは大きいが、課題になるのは、投資利益率が年平均15%以上(資本金1億円以下の企業は5%以上)になるように投資計画をつくらなければならないことだ。
大塚商会の須田洋一・マーケティング本部共通基盤プロモーション部統合企画課専任課長は、「A類型は買った後に処理できるが、B類型は投資の前に計画が必要になる。ユーザーにとっては、生産管理に詳しい税理士などの協力が得られなければ制度を有効に使うことができない事態が生じる可能性がある」と指摘する。

PCA
田邨公伸
係長 経産省の松本課長補佐は、「業界へのヒアリングを行った結果、ソフトウェアで投資利益率が15%を下回る案件はないと考えている。対象が広いので、本来はB類型のほうが使いやすいはず」という。しかし、中小企業にはハードルが高い要件であることも認めており、「SIerやソフトメーカーには、計画づくりを何らかのかたちでサポートしてほしい」と訴える。
これに対して業務ソフトメーカーであるピー・シー・エー(PCA)の田邨公伸・営業本部戦略企画部プロダクト企画グループ係長は、「販売パートナーへの影響も含めてB類型がエンドユーザーへの提案のフックになるのは間違いないと思っている。できる限りの支援はしたいが、投資利益率の計算は案件ごとに条件が違うので、統一のモデルのようなものをつくろうとしても難しい」とみている。対策としては、大塚商会の須田専任課長と同様、経営をアドバイスする税理士などを巻き込んで「メーカー、販社と士業が一体となってユーザーをサポートしていく必要があるだろう」と話す。
始まったばかりの「投資促進税制」
制度運用の課題と投資促進効果は?
●現在は様子見の状態
「生産性向上設備投資促進税制」は、1月20日に施行されたばかりだが、本格的な運用は来年度からになる。現状の課題は、証明書の発行対象にまだ不透明な部分が多いことだ。経産省は制度設計にあたって、「なるべく幅広いIT製品が対象になるように制度設計した」(経産省の松本課長補佐)としているが、現状では、ITベンダーの戸惑いを招いている感は否めない。ピー・シー・エーの田邨係長も、「自社製品については適用範囲を探っているという段階」と明かす。ベンダー各社は、「具体的な範例のようなものが出てこなければ、ユーザー側の利用も拡大しないだろう」と口を揃える。
証明書の発行手数料を誰が負担するのかもグレーゾーンだ。ベンダーによっては、ユーザーに請求することも考えているというが、例えばソフトウェアへの投資の税額控除は数万円にしかならないケースもあるわけで、数万円の税額控除のためにかかる費用が6000円というのが適正なのかという議論も当然出てくるだろう。
一方で、「生産性向上設備投資促進税制」のビジネス上のポテンシャルについては、各社とも大きな期待を口にする。大塚商会の須田洋一専任課長は、「通常、とくに中小企業では、こうした税制についてユーザーがあまりご存じないが、今回は逆にユーザー側から問い合わせが多い」と反響の大きさに驚いている。
NECの岡田シニアマネージャーも、「サーバー分野では、Windows Server 2003のマイグレーション需要が高まっているが、これに減税措置を絡めて提案できるのは大きい」と、期待を寄せる。ただし、制度自体が全国の販社にそれほど広く知られている状況ではないので、ソフトウェアベンダーやサーバーメーカーの各社は、パートナーへの啓発活動に本腰を入れようとしている。記者の眼
国が「生産性向上設備投資促進税制」の税額控除で見積もる減税効果は数千億円。ITベンダーもこれを見逃す手はない。徐々に詳細が固まりつつある制度の運用スキームについてしっかり情報収集し、ユーザーへの提案の「最後の一押し」に活用すべきだろう。
一方で、日本企業の7割は赤字企業で、中小企業に限ってみればその割合はさらに高くなる。法人税を払わない赤字企業にとっては、基本的に税額控除は投資のトリガーにはならない。ただし、中小企業投資促進税制の拡充措置分の税額控除は1年間繰り越すことができるので、その年度が赤字でも、次年度に黒字が予想されるなら、次年度の節税策としてIT投資を提案できる。また、即時償却も、9年間損失を繰り越して次年度以降の課税所得と相殺することができる。そう考えると、短期的には赤字でも、投資する体力があり、中期的に成長が見込まれるユーザーには、「生産性向上設備投資促進税制」を利用したIT投資の提案は、意味がある。
いずれにしても、ITベンダーが「生産性向上設備投資促進税制」を大きなビジネスチャンスにつなげられるかどうかは、ユーザー企業の経営計画に左右される。会計事務所などと連携してユーザー企業の経営状況を把握し、生産性の向上を抜本的に支援する提案を行うことがビジネスの成否を決めるだろう。